2016 Fiscal Year Research-status Report
文献学的方法による平安時代仮名文学の定説再検討と新見創出
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25370243
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
久保木 秀夫 鶴見大学, 文学部, 准教授 (50311163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 信敬 鶴見大学, 文学部, 教授 (00124199)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 平安時代仮名文学 / 中古中世和歌 / 中古仮名散文 / 書籍目録類 / 古典籍 / 古筆切 / 文献学 / 書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の目的は、平安時代仮名文学を中心とした古典文学作品に関する、従来の文献学的成果を批判的・徹底的に見直すこと、のみならずその上で、原本及びそれに準ずる資料、関連する資料をあらためて調査し直し、かつ埋もれていた資料を発掘し直し、厳密な書誌学・文献学的方法に基づき研究し、新たな見解を提示することである。 そうした目的のもと、平成28年度も、全国各地の所蔵機関に赴き、あるいは複写等によって取り寄せた図版資料に基づきながら、古今集や新古今集を中心とする勅撰集、如意宝集その他の私撰集、猿丸大夫集その他の私家集、二十巻本類聚歌合、未詳歌集、また伊勢物語、大和物語、源氏物語、枕草子、土左日記、四鏡、未詳仮名散文などについての古典籍や古筆切類、それらに関わる書籍目録類の、形態および書写印刷内容に関する調査研究を実施した。かつ、古典籍類の享受・伝来についての貴重な情報源たり得る、種々の古文献をも精査した。結果、伊勢物語のうち「小式部内侍本」に関してや、二十巻本類聚歌合のうち「天喜三年物語歌合」に関して、さらに本朝書籍目録の伝本と本文に関しての論などを公表した。ほか公表までには至らなかったものの、現時点で、上に挙例したいずれの作品に関しても、1点以上の論を組み立てられるくらいの知見は得るに至っている。 また本年度、新たに竹取物語の伝本に関しても調査研究を開始し、従来説の不備不足や、補訂すべき点、新たに指摘すべき点などについての見通しを得ることができた。さらに、これまで必要性を痛感し続けていた、絵巻物の書誌学・文献学的研究にも着手した。 なお本年度も、陽明文庫蔵の二十巻本類聚歌合について、継続的な原本調査を実施した。これまでと同様に、舟見一哉氏(文部科学省・教科書調査官)に研究協力者としてご助力いただき、精緻な書誌情報を追加していくことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要欄に記したとおり、和歌でも仮名散文でも、論として公表できるまでの調査研究成果自体は、相応の量、すでに得ている。ただし校務その他により、研究時間の確保が年々困難となっており、論文化するための時間が想定以上に得られなかった。論文化したい成果は多々あるものの、現実的にそれが適わないという点で、(1)の「当初の計画以上」に進展しているとまでは言いがたいと判断し、(2)とする次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
伊勢物語の重要伝本のうち、行方不明となっていた1本の所在について、かねてより調査を続けていたところ、平成28年度末になって現存と現蔵先とが明らかとなり、平成29年度における実地調査、及び研究のご許可をいただくことができた。最終年度は、予算額も多くはないため、まずは同本を主とする諸資料の調査研究を中心としつつも、原本調査の総量自体は抑え気味とし、これまでの4年間と、平成29年度に得られた研究成果を総括する方向で進めていきたい。 なお、ここ数年の間に、Web検索の環境や性能が飛躍的に向上し、それによって、これまで内容不明とせざるを得なかった未詳仮名散文の出典を、少なくない数、明らかにしつつある。その調査結果や、そこから展開させた研究成果に関しても、方法や媒体等に関する試行錯誤を要するものの、何らかの形で盛り込められれば、と考えている。
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Causes of Carryover |
前述のとおり、行方不明となっていた伊勢物語の重要伝本を再発見し得たことや、未詳仮名散文の古筆切の出典が予想以上に明らかになりつつあること、といった本研究の現状を鑑み、それらを本課題の研究成果に可能な限り含めるべく、必要となる調査研究予算を最低限確保しておきたいと判断したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
伊勢物語の上記の1本や、出典が明らかになった仮名散文の古筆切、またその他、本課題で取り組んでいる諸作品のうち、研究の取りまとめに必要となってくる調査旅費や複写費、データ整備などの謝金として活用することを計画している。
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Research Products
(6 results)