2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370245
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
森田 貴之 南山大学, 人文学部, 准教授 (90611591)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔦 清行 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (20452477)
小山 順子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (20454796)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 蒙求和歌 / 源光行 / 和漢比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
『蒙求和歌』諸本のうち、本文が未公刊であった第二類本第二種本の本文を翻刻し、主要伝本との校異を含めた公刊を果たした。これにより主要な形態の伝本がほぼ出揃い、これまでの新編国歌大観のみに依存した研究環境を大きく改善することができた。同時に、前年度までに公刊を終えていた『蒙求和歌』第三類本(一類本・二類本の混態本)について、その基本的性格を検討し、両本が混態される過程において用いられた伝本はかなり良質ものであり、現存の一類本・二類本の欠脱を補い得る有効な資料となることを明らかにした。ただし、一部には第三類本特有の増補も見られることも併せて指摘した。 さらに『蒙求和歌』のみならず、同じ源光行の著作である『百詠和歌』を対象に含めて、源光行の和歌表現を検討し、『蒙求和歌』『百詠和歌』の和歌表現に新古今的表現が頻出すること、さらに、光行の『源氏物語』研究の師である藤原俊成の影響が濃く認められることを指摘した。この研究により、漢詩和歌化という特殊性ゆえに見落とされてきた『蒙求和歌』『百詠和歌』を同時代の中に位置づけること、また光行の文学的形成を考える糸口を得ることが出来た。 また、問題にされることの多かった『蒙求和歌』一類本・二類本の先後について、説話部分の文体から考察した。特に重視したのは漢文訓読的要素の軽重である。「イハク…トイヘリ」という呼応や、係助詞ナムの使用などについて、その分布や両系統間の相違を通じて検討すると、二類本に訓読文的傾向が強いのに比して、一類本は和文的色彩が濃いことが明らかになる。このことに加え、『蒙求和歌』が漢籍の『蒙求』に基づいて成立しているという事実を考え合わせれば、訓読文的な二類本が先に成立し、それを改編して和文的な一類本ができたのだと結論づけられる。
|
Research Products
(4 results)