2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Origin of Medieval Gakusho, Inheritance of Gagaku Secrets, and Basic Research on Gakusho
Project/Area Number |
25370248
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
中原 香苗 神戸学院大学, 経営学部, 准教授 (80469270)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 楽書 / 講式 / 説話 / 秘曲伝授 / 日本音楽史 / 掌中要録 / 文机談 / 長谷寺縁起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本文化史上の音楽の重要性に鑑み、楽書と、音楽をともなう仏教儀式にまつわる資料についての研究を中心に行った。 楽書研究では、南都の楽人狛氏周辺で成立した楽書「春日楽書」『掌中要録』(どちらも鎌倉期成立)『竹舞眼集』(室町期成立)を検討した。まず、春日大社寄託の断簡二葉が、同大社蔵の鎌倉期成立の楽書群「春日楽書」の一部であることを明らかにした。この成果は、今後の「春日楽書」研究に資するところ大であるといえる。狛氏で伝承された舞楽の楽譜集成である『掌中要録』については、2系統の伝本の書写の経緯について検討し、当該楽書が徳川幕府による楽書の収集、書写、収蔵と関わっていることを明らかにした。また『竹舞眼集』引用の『舞楽府合抄』をとりあげ、この楽書が楽の家の継承者2名に与えるべく微妙に内容の異なる形で2種作られたという、楽の家の相承と楽書生成の相関を明らかにした。加えて『文机談』に記される始原の秘曲伝授説話に着目し、この説話に貴顕に秘曲伝授の儀式を行って報酬を得る楽人の実情が反映していることを指摘し、秘伝の相承にまつわる説話生成の具体相を明らかにした。楽書の基礎研究として、『続教訓抄』『体源抄』という中世の重要な楽書の伝本の収集、分析を進めた。作業は現在も進行中であるが、最終年度には今後の伝本研究に活用すべく、資料のデジタル化を行った。 音楽をともなう仏教儀式に関しては、儀式で奏される「講式」を記した「音楽講式」の断簡を紹介した。また音楽法会をともなう場面をもつ堺長谷寺蔵の長谷寺縁起について調査を行い、同寺所蔵の縁起関連の資料とともに『(堺)長谷寺縁起』ならびに『(大和)長谷寺縁起』の影印・翻刻を掲載した報告書を刊行し、最終年度には堺長谷寺蔵の同寺縁起関連資料についての考察をまとめた。 本研究は、楽書研究、説話研究のみならず日本音楽史研究の進展に寄与するものといえる。
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Research Products
(1 results)