2015 Fiscal Year Research-status Report
尼寺の文芸文化と物語草子・仮名法語における相互連関の研究
Project/Area Number |
25370259
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
恋田 知子 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (50516995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物語草子 / 仮名法語 / 絵巻 / 尼僧 / 比丘尼御所 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は『幻中草打画』の最古写本を所蔵する鶴満寺より原本調査の機会をいただき、禅宗の尼僧による問答を主軸とする物語草子で仮名法語としての側面も有し、室町期の寺家と貴顕との交流をもうかがわせる当該作品の特徴について口頭発表をおこない、それに基づく論文を投稿した(「尼と物語草子」『國語と國文學』92―5、2015年5月、142~153頁、昨年度成果に記載済み)。 これに加えて今年度は、従来白描の絵本が知られるのみであった『幻中草打画』に、彩色絵巻の現存することが新たに判明し、調査に着手した。こうした調査の成果をふまえ、研究の概要や経緯について「東京新聞」に「幻の骸骨絵巻を求めて」と題する小文を寄稿し(「東京新聞」「中日新聞」夕刊文化面、2015年6月15日)、国文学研究資料館の広報誌である『国文研ニューズ』にも「室町の信仰と物語草子―骸骨の物語絵をめぐって」として小考をまとめ(『国文研ニューズ』40、2015年8月)、研究成果を広く社会にも還元できるよう努めた。 さらに昨年度の原本調査から今年度の新出本の判明にいたるまでを概括した上で、当該作品を中心に江戸初期の仮名法語の開版と物語草子制作との連動性についても考察し、本研究課題の主要成果として「骸骨の物語草子―『幻中草打画』再考」(天野文雄監修『禅からみた日本中世の文化と社会』ぺりかん社、2016年6月刊行予定)をまとめた。 なお、これまでの自身の研究内容をふまえ、女性と宗教テクストのかかわりという観点から、「女性をめぐる唱導―「卵生」と「授乳」の説話から」と題する講座などもおこない、社会還元に努めた(金沢文庫連続講座「仏教説話の世界」2015年10月3日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の原本実見の機会や今年度の新出本の判明などにより、計画当初には予期していなかったにもかかわらず、研究課題に合致した作品の再考に取り組み、その成果を論文としてまとめることができた点では、当初の計画以上に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の原本実見の機会や今年度の新出本の判明など、予定外の研究対象に着手したことで、当初の研究計画の変更を余儀なくされたが、28年度新たに採択された研究課題は本研究の延長上にある研究であるため、あわせて研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査先との日程調整がつかず、変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に若干の変更が生じたため、海外から国内の調査先に変更する方向で調整を進めている。
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Research Products
(2 results)