2013 Fiscal Year Research-status Report
18世紀前半イギリスにおけるオラトリオ形成への笑劇とバーレスクの影響
Project/Area Number |
25370267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
高際 澄雄 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (50092705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘンデル / 18世紀前半イギリス演劇 / バラッドオペラ / バーレスクオペラ / 乞食オペラ / ウォントリーの竜 |
Research Abstract |
平成25年度は、18世紀前半期のバラッドオペラとバーレスクオペラを調査した。 1727年に『乞食オペラ』が初演され、大当たりを取って以降、バラッドオペラが人気のジャンルとなり、続々と新しい作品が制作公演された。だが、少数の例外を除いて、大当たりを取る作品はなかった。その理由は、『乞食オペラ』の制作目的との決定的な違いによる。『乞食オペラ』は、当時の流行ジャンルであったイタリア歌劇を批判し、合わせて、そうしたジャンルを成立させている社会を批判しているが、他のバラッドオペラは専ら演劇の中に流行歌の替え歌を入れただけの、形式模倣がほとんどであったので、その場限りの作品となってしまったのである。したがって、後期になると二本立て(double bill)の後続作品として、人寄せ演目となってしまったのである。以上が、バラッドオペラの諸作品を調査して明らかとなった。 一方、バーレスクオペラ『ウォントリーの竜』は、その人気からバラッドオペラと混同されることが多いが、大英図書館所蔵のWord Book、楽譜、また1984年のケンブリッジ大学オペラグループの公演録音記録(1985年BBC放送の録音記録)から、全く異なるジャンルであることが明らかとなった。使用言語は英語であるが、レチタティーヴォ、アリア、合唱をもち、イタリア歌劇の形式を模倣し、茶化している。しかも、喜劇形式としては竜頭蛇尾法を巧妙に使って、笑いの要素を高めている。ここには、17世紀後半に人気のあったバラッド『ウォントリーの竜』の存在があることも明らかとなった。 同時代人の証言から、ヘンデルはバーレスクオペラ『ウォントリーの竜』を評価していたことが知られる。ここには、翌年ヘンデルによって制作公演された『セルセ』の喜劇的要素を見て取ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大英図書館で『ウォントリーの竜』の公演がBBCで放送され、録音記録されていることは明らかであったが、依頼すると図書館員がビデオによる録音をmp3にダウンロードしてくれて、録音を繰り返し聴くことができ、細かなところまで、その作曲意図と表現方法を詳しく調べることができた。また『ウォントリーの竜』の元歌であるバラッドを調査することの重要性も、ある論文から理解することができた。 Rubsamenのテクストは日本には分散的に大学図書館が所蔵しているため、それぞれ借りだして、研究することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これから笑劇の影響を主としてフィールディングの作品から調査する。すでにフィールディングの作品集は入手している。またヘンデルの『セルセ』のみならず、『ファラモンド』『ジュスティーノ』『パルテノペ』から調査を行い、ヘンデルのイタリア歌劇作品の変化を調査し、オラトリオへの移行を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
定年退職年度に当たり、後期にも海外出張する予定であったが、多忙のため時間がとれなかったことと、研究が順調に進捗し、海外出張しなくても研究目標が達成できたため。 平成26年度は退職したため、年度内に2回の海外出張が可能となったので、夏と冬に海外出張を行い、調査を行いたい。
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