2013 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピアの近代初期改作と近代論に関する表象文化論的考察
Project/Area Number |
25370271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康成 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10116056)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シェイクスピア / 翻案 / テイト / 近代化 / 世俗化 / 自然 / 女性原理 / 国家 |
Research Abstract |
Nahum Tateによるシェイクスピアの翻案2作(The Ingratitude of A Commonwealth, The History of King Richard the Second)を対象として、それぞれ原作との差異を、nature, nation, voice/vote, femininity, sovereigntyといった主題のもとに検討した。その結果、natureに関しては、原作に前提とされていた豊穣の概念およびいわゆる「月下圏」の制約の事情等の意識と感覚が、翻案ではことごとく稀薄あるいは無視されていることが確認された。nationに関しては、17世紀の政治的大動乱の後を受けて、おのずと翻案では鮮明なイメージを結んでいることが分かった。原作できわめて重要な意義をもっていたvoice/voteの身体的機能は、翻案では薄れており、それはsovereigntyの概念の台頭と相まって、「政体」概念に根本的な質的変化が起こったことの反映であると解明された。femininityに関しては、特にCoriolanusに特徴的な女性人物の機能が翻案できわめて意義深い変容を遂げているこを確認し、その変容の意味について、近代論、世俗化論の古典的研究であるJurgen Habermasを参照しつつ、考察を進めた。さらにnature/femininityの関連では、cuckoldryの社会文化的変容の視点からも考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シェイクスピアの原典と17世紀後半の翻案との差異を通じて、近代概念の再評価を行うための具体的な議論の踏み台を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 原作と翻案で別の例にあたる。 2 近代論においても別の系譜の議論を参照する。 3 自然と政治(政体)と権力について新たな知見を渉猟する。 4 そのうえで、いまいちど原典シェイクスピアとその時代的問題系にたちもどって考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月に予定されていた国際学会が8月に延期となったため年度を越えて使用せざるを得なくなった。 2014年8月に予定されている国際学会出張に充当する。
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Research Products
(3 results)