2014 Fiscal Year Research-status Report
南北戦争文学におけるジェンダー規範の撹乱―ルイーザ・メイ・オルコットを中心に
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25370274
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
斎木 郁乃 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90294355)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 南北戦争 / オルコット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南北戦争中とその前後に書かれた小説、詩、日記、素描、書簡等に表れるジェンダーにかかわる言説を分析し、戦争という暴力による社会秩序の混乱が、ジェンダー規範に及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。 今年度の第一の実績としては、3月にニューヨークで行った資料収集とその分析に基づいて、来年度4月に名古屋大学英文学会にて講演予定の「オルコットのスリラーと南北戦争」と題した発表原稿を仕上げたことである。ニューヨークでは、パブリック・ライブラリーを中心に、南北戦争期に主に北部で発行された新聞や雑誌の記事を幅広く読み、特に「南北戦争ロマンス」と呼ばれる、恋人を戦地に送り出す北部女性の哀しみと愛国心を描いた感傷的な物語群を収集した。発表原稿では、ルイーザ・メイ・オルコットが偽名で出版したスリラーの一つ_Behind a Mask; or, a Woman's Power_と「南北戦争ロマンス」を比較検討するとともに、_Behind a Mask_の主人公ジーンが持つ看護の技術に暗示されるエロティックなニュアンスに、戦場病院におけるエロティシズムの抑圧の反動を読み取った。オルコットの扇情小説と南北戦争の関連を論じた過去の研究はほとんどなく、来年度中により精緻な論文として仕上げてレフェリー付きの学術誌に投稿したい。 第二の実績として、一昨年度、国際学会で発表済みの"The Rhetoric of Maternity in the Civilw War: Melville, Whitman and Alcott"を改稿したが、まだ出版には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の主な成果は、南北戦争ロマンスという戦争とジェンダーについて考察するにふさわしい大衆文学のジャンルを見出し、南北戦争期以外の19世紀に盛んに書かれた感傷小説との比較などの考察ができたことである。 口頭発表の原稿としてはこれまでに2本完成しているが、出版に至っていないので、最終年度でどちらも改稿し、ジャーナルに投稿することを目標とする。
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Strategy for Future Research Activity |
ルイーザ・メイ・オルコットが南北戦争や人種を描いた他の作品、"My Contraband" や"M. L." などについてさらにジェンダーとのかかわりから論じていきたい。また、「南北戦争ロマンス」を通して北部女性のジェンダー観を考察すると同時に、南部の貴族社会を生きるいわゆる"Southern Belle"やそこから堕落した悪女を主人公とした南部の戦争物語を読み込んで、北部の女性像と比較してみたい。
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Causes of Carryover |
注文時期が遅れ、年度内に納品されなかった書籍があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な洋書を早めに注文し、購入する。
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