2015 Fiscal Year Annual Research Report
南北戦争文学におけるジェンダー規範の撹乱―ルイーザ・メイ・オルコットを中心に
Project/Area Number |
25370274
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
斎木 郁乃 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90294355)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 南北戦争 / ジェンダー / オルコット / メルヴィル / ホイットマン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南北戦争中とその前後に書かれた小説、詩、書簡、素描、日記等に表れるジェンダーに関する言説を分析し、戦争という暴力による社会秩序の混乱がジェンダー規範に及ぼした影響を明らかにすることを目的とする。今年度は、南北戦争をめぐるジャーナリズムのあり方について、ルイーザ・メイ・オルコットが自らの南北戦争看護師体験をもとに創作したHospital Sketches(『病院のスケッチ』)を中心に考察を深めた。『病院のスケッチ』は、ヴァージニアの鍛冶屋ジョンがオルコットのペルソナであるペリウィンクルの懸命な看護を受けながら英雄的な死を遂げる第4章に焦点を当てて論じられることが多かった。しかしながら、この作品は銃後で家族の安否を気遣う同時代の読者にとっては貴重な最前線からの戦争レポートであり、オルコットが記者として女性の目線で戦場病院を再解釈することを意図したものとして読める。論文「『病院のスケッチ』におけるオルコットのジャーナリズム」(『英學論考』44号)では、あまり論じられることのないこの作品の1,2章が女性の従軍の難しさを告発していることや、手紙の代筆や看護を通して兵士の内面に迫る戦争を女性化する視点を分析し、オルコットのジャーナリズムについて考えた。6月に行われた第10回国際メルヴィル学会では、戦争と環境とジェンダーについてメルヴィルと池澤夏樹の作品を比較分析した「Melville, Ikezawa, and the World after 3.11」を発表し、国内外の研究者と活発な議論を交わすとともに、主催者として大会の運営にもかかわった。3月には議会図書館(ワシントンDC)にて南北戦争に関する文献を収集し、今後の研究の発展を模索した。
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