2014 Fiscal Year Research-status Report
近代初期英国における寡婦・寡夫文学と若者文化との関連性についての歴史的研究
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25370280
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
滝川 睦 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90179573)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 寡婦・寡夫文学 / 近代初期英国 / 寡婦 / シェイクスピア / 『十二夜』 / ジョン・マニンガム / シャリヴァリ / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)平成25年度に分析対象としなかった近代初期英国における寡婦・寡夫文学作品を分析し、そのジャンルの同定と、作品の制作年代・特徴のデータベース化を行った。(2)近代初期英国における若者文化と寡婦・寡夫文学との関連性を、とくに寡婦・寡夫の家庭・社会内の権力や地位と連関した、贈与の観念や儀礼に焦点を合わせて解明した。(3)寡婦・寡夫をモチーフにした古代ローマの喜劇、そして16-18世紀イタリアのコメディア・デラルテの伝統と近代初期英国の寡婦・寡夫文学との関連性について分析した。(4)近代初期英国におけるドメスティシティの概念と寡婦・寡夫文学との関連性に焦点を合わせながら、家父長制家庭像の復元作業を行った。(5)平成25年度に引き続き、寡婦・寡夫文学と近代初期英国における社会的変動との関連性について研究を行った。(6)上の五つの成果を総合する形で、シェイクスピアの『十二夜』を、とくに寡婦としてのオリヴィア像に着目しながら、近代初期英国の寡婦・寡夫文学の伝統に掉さす作品として分析した。分析の結果は以下のとおりである。『十二夜』の初期観客のひとりである、ジョン・マニンガムは本劇に登場するオリヴィアを、観劇記録の中で「寡婦」とみなしているが、実際に本作品にはオリヴィア=寡婦として解釈することを可能にする寡婦・寡夫文学の種種の要素が含まれている。とくに執事マルヴォリオは、主人であるオリヴィアとの結婚を夢見ることによって、周囲の登場人物から民衆的制裁儀礼シャリヴァリの標的とされてしまう。「寡婦」であるオリヴィアとの結婚を夢見るマルヴォリオは、身分違いの結婚を志向する、民衆的制裁の対象者そのものであると結論づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」欄には、近代初期英国における寡婦・寡夫文学のジャンルの焦点化、近代初期の寡婦・寡夫像を復元することにより、当時の文学キャノン(canon)の見直しを行うこと、寡婦・寡夫文学と近代初期英国の若者文化の関連性を解明すること、の三点の目的を掲げたが、どの目的事項に関しても、平成26年度の研究実施計画に基づいて研究が行われ、当初期待していた研究成果を収めることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「平成27年度の研究実施計画」どおりに研究を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度に出版されるはずであった書籍(物品費)が、次年度に延期して出版されることとなり、26年度中に購入することができなかった。ついては、その書籍を平成27年度に購入するために、その書籍の購入予定金額を次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上の「理由」で述べたように、平成26年度に購入する予定であったにもかかわらず、出版が延期されている書籍を次年度使用額にて購入する。
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