2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370286
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (10123803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | REED / 初期英国演劇資料 / 地方巡業 / 劇団 / シェイクスピア / 宮内大臣一座 / 国王一座 / エリザベス女王一座 |
Outline of Annual Research Achievements |
Oxford, Cambridgeその他の地域について、対巡業劇団支払い記録を中心に詳細な時系列資料を作成した。この資料の分析に基づいて、あるいは部分的に利用して論考をまとめ、2件の口頭発表と1件の講演を行った。 (1)REED (Records of Early English Drama)を読む――Oxford, Cambridge, Devon, Kent, Yorkを中心に――(研究発表):地方巡業の様態、劇団に対する自治体の処遇は、劇団によって、地域によって、さらに時代によって大きく異なることを具体的な事例に即して明らかにした。また役者と他の旅芸人(楽師、曲芸師、熊使い等)との比較を通して、当時の巡業劇団は多数の旅芸人のカテゴリーの一つにすぎなかったものの、しかし同時に女王一座のように特権的な劇団も存在していたことを指摘した。 (2)『初期英国演劇資料集』を読む――特権劇団としての宮内大臣一座・国王一座――(研究発表):REEDの記録その他の関係資料の分析を通して、女王一座と宮内大臣一座・国王一座が特権的な劇団であったことを明らかにした。女王一座は地方巡業を最も旺盛に行った劇団であり、また別格の処遇を受けた一座であった。宮内大臣一座は、地方巡業が非常に少ない劇団であった。一座はロンドンの最有力劇団であり、その後身の国王一座は、王室の厚遇を得た特権的劇団であった (3)シェイクスピア時代の「検閲」とはなにか(講演):シェイクスピア時代の宮廷祝典局長による検閲は、多くの識者が考えるほどに禁圧的・抑圧的なものではなく、局長の事前検閲はむしろ、公演のお墨付きを与えることによって役者たちを演劇の敵から守る盾になったと論じた。講演の中で、REEDの資料に基づいて、祝典局長のライセンスが劇団の地方巡業にまで及んでいたことを指摘した。講演原稿は後に、紀要論文として刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の研究期間は、当初の計画では平成25年度~27年度の3年間であったが、厖大な資料調査に思いのほか時間を要し、加えて平成26年4月に所属部局の長に就任するという予想外の事態の展開のために、平成26年度の研究計画の大半を遂行することができなかった。平成27年度は劇団の地方巡業関係資料の編集作業、関連の研究発表を行うことができたが、積み残しの計画がかなり残っている。そのため研究計画期間を延長して、未達成の研究計画を平成28年度に遂行することとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
未達成の研究計画のうち関連資料の整理・統計表の作成と自治体別巡業劇団活動の変遷の分析・記述とを最重点項目として、下記の作業を行う。 (1)劇団別地方巡業回数、対劇団支払い記録、劇団別上演禁止記録を年代別に調査し、統計表を作成する。その統計表に基づいて、項目別に経年変化を表わす資料を作成する。この作業は平成25年度より開始しているが、平成28年度内に、少なくとも20の地域の統計表の完成をめざす。 (2)ジェイムズ朝以降、地方巡業は次第に衰退するように思われるが、自治体による差が大きい。17世紀中葉の劇場閉鎖時までの自治体別経年変化を分析・記述する。
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Causes of Carryover |
研究計画が遅延し、計画していた国内外での関係資料収集、文献調査を十分に行うことができず、留保していた旅費、文献・研究情報収集予算が未使用となり、残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
7月~9月、あるいは1月~3月に集中的に、国内外における関係資料収集、文献調査を行う計画である。またシェイクスピア学会、英文学会、エリザベス朝研究会その他の関連の研究会、学会等に参加する予定である。前年度において未使用の助成金は主として、これらの旅費および関係資料収集、文献調査費に充当する。
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