2014 Fiscal Year Research-status Report
身体・ことば・貨幣をめぐるトマス・ハーディ研究――経済と連動する文学テクスト
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25370289
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
亀澤 美由紀 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60279635)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Thing theory / ホモソーシャル理論 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではトマス・ハーディのテクストを、身体・ことば・貨幣の象徴交換としてとらえ、近代から現代を通じて社会が経験してきたシステム変動――性の揺らぎ・文学ジャンルの動揺・経済システムの変化――がそれぞれ別個の動きではなく、密接に関連した事象であることを明らかにすることを目的としてきた。身体が近代の刻印を受ける様子や、「テクスト化された身体」やことばが主体(記号の使用者)を転覆する様子、それに対応してリアリズムに亀裂が入る様子などを析出することに主眼をおいて研究を行った。さらにまた、そうした主体転覆のプロセスが、19世紀における経済システムの変動と軌を一にすることを証明することも目的のひとつにおいて研究活動を行った。 平成26年度は、なかでも特に次の二つを主な柱として研究活動を行った。①平成25年度に引き続き、Thing theoryでJudeを分析し、その研究内容を英語論文にまとめた。主な主張は、Judeのリアリズム的な描写が、一般的に認められているような主体形成に貢献するのではなく、逆に主体転覆に寄与しているというものである。Thing theoryそのものが日本ではほとんど知られておらず、また海外でもそれの文学テクスト分析への応用はあまり行われていないため、これは他に先駆けた研究であろうと考える。論文自体は本の一章分に相当する長さ(12,000words)であるが、とりあえずこれを雑誌論文として投稿すべく、現在6,000words程度に編集しなおしているところである。 ②Tess研究では、セジウィックのホモソーシャル理論をこれにあてはめ、男性性がどのように構築され、それが貨幣経済とどうつながっているのかを分析した。ほぼアウトラインを完成し、間もなく執筆作業にはいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テクスト分析、論文アウトライン作成まではほぼ順調に進行しているのだが、12,000wordsのJude論を雑誌投稿用6,000wordsに編集しなおすといった作業のために時間をとられてしまい、執筆作業が遅れがちである。ただし、Thing theoryの有効性を発見したことは非常なプラスであり、Jude研究に想定以上の時間がかかってしまっているとは言え、研究全体にとってはむしろプラス面の方が大きい一年だったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Jude論(6,000words)を早急に書き上げ、海外学術誌に投稿し、発表する。また、できるだけ早い時期にTess論の執筆に入り、これをまとめる。Tess論執筆と同時に、The Mayor of Casterbridge のテクスト分析を行う。
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