2015 Fiscal Year Research-status Report
身体・ことば・貨幣をめぐるトマス・ハーディ研究――経済と連動する文学テクスト
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25370289
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
亀澤 美由紀 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60279635)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トマス・ハーディ / E.K.セジウィック / ジェンダー / Thing theory |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はトマス・ハーディのテクストを、身体・ことば・貨幣の象徴交換としてとらえ、近代から現代を通じて社会が経験してきたシステム変動――性の揺らぎ、文学ジャンルの動揺、経済システムの変化――がそれぞれ別個の動きではなく、密接に関連した事象であることを明らかにすることを目的としてきた。 平成27年度は次の3つの事項を中心に研究を行った。 ①『ジュード』分析を2本の英語論文にまとめた。ハーディの後期小説に関しては、これをジェンダー理論だけで分析するには限界があり、それを補うものとしてThing theoryの有用性を発見した。Thing theoryを援用することにより、ジェンダー主体が性以外のイデオロギー、たとえば物質主義によって形作られていることを析出した。分析結果をまとめた論文のうち、一本は投稿済み、現在審査中である。もう一本も近日中に投稿・審査を受ける予定である。 ②『テス』に関する分析を開始した。これに関しても、当初はE.K.セジウィックのホモソーシャル連続体理論を主に使って分析を進める予定であったが、近年、男性性に関する研究が目覚ましく、それらの研究成果を視野にいれて、再度研究に修正を施すことが必要となった。修正を加えたことにより、このテクストが描く男性性の詩学が階級や国際関係といった性とは直接関係のない事項によって構築されていることが明らかになってきた。現在、その分析結果を約半分まで英語論文にまとめたところである。 ③セジウィックのホモソーシャル連続体理論を超える枠組みとしてThing theoryを加えるとどうなるか、それをまとめた論文“Symbolic Economy of Words, Money and Bodies: E.K.Sedgwick and Beyond”を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初、E.K.セジウィックのホモソーシャル連続体理論を研究の枠組みとして進める予定であった。しかしながら実際に分析を進めてみると、その限界も明らかとなり、新たな理論(Thing theory)を加える必要が生じた。また、男性性に関する研究も急速に進展していることが判明し、それらの先行研究にも時間をかけて考察を加える必要が生じた。こうした理由のために、研究の進展は当初よりも遅れ気味である。しかしながら、これらはより優れた研究成果を上げるための遅れであり、憂うべき問題ではないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Jude分析の未投稿論文を早急に仕上げ、学術雑誌に投稿する。また、Tess分析の後半を仕上げ、論文としてまとめる予定である。年度後半は、The Mayor of Casterbridgeの分析に入る予定である。
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Research Products
(1 results)