2013 Fiscal Year Research-status Report
トリニダードの知識人による詩・音楽・仮装を中心とした文化論の系譜とその遺制
Project/Area Number |
25370292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
梶原 克教 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (90315862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カリブ海地域 / 文化論 / ポストコロニアリズム / 国際情報交換 / トリニダード・トバゴ / 表現媒体 / 修辞法 / 行為遂行性 |
Research Abstract |
「研究実施計画」に記したとおり、本年度は10月より愛知県立大学学長特別研究費(長期)の支給が決定したために、本科研費研究課題と学長特別研究課題とが重なる領域に絞り込んだ調査、すなわち、本研究課題の対象であるトリニダード知識人のうちC. L. R.ジェイムズが残した資料に関する収集と読解を重点的におこなった。 資料収集はロバート・W・ウッドラフ図書館を中心におこない、2月にはやはり研究計画に従って西インド大学での資料収集をおこなった。当初セント・オーガスティン校でおこなう予定であったが、ウッドラフ図書館で収集した資料の初版がモナ校に所蔵されていることが判明したので、調査場所をモナ校に変更した。 実際に収集した資料で重要なものを具体的に挙げると、まずダリル・ダンスによるC. L. R.ジェイムズへのインタビューテープや1985年のインタビュー資料。これらは日本で入手不可能であることに加え、ジェイムズの思想の全体像を俯瞰するために重要である。続いて、“Down with Starvation Wages”や”The Revolutionary Answer to the Negro Problem in the USA”、“W. E. B. Dubois”などの、ジェイムズが米国滞在中に残したやはり日本では入手困難な評論。そして、西インド大学でおこなわれた講演の“The Artist in the Caribbean”があげられる。本資料は初録であるため資料価値が極めて高い。 研究成果発表については、多民族研究学会が2014年3月に発行する予定であった記念論集に論文を執筆して提出したが、発行が7月にずれ込んだために、本年度中の発表はできなかった。しかし、国際学会発表を1度おこない、国内シンポジウム講師を2度つとめ、成果を発表すると同時に研究の方向調整をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学長特別研究(長期)という形で半年間の研究期間を得ることができたために、通常の教育その他の業務が免除されたぶん、集中的に腰を落ち着けた研究をおこなうことができた。 長い米国滞在期間を得たおかげで、研究目的の重要な柱のひとつであるC. L. R. ジェイムズの思想にアプローチするための資料、とくに彼が米国滞在中に残したものやインタビューなどの貴重な資料を収集することができ、かつ西インド大学にも渡り初録などの資料価値の高いものを調査できた。その結果、今後の研究を継続するに当たり十全な研究基盤がそろったことを考えると、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
C. L. R. ジェイムズが残した文献は、扱う対象の多様性において類をみない。それゆえジェイムズ関連資料の整理と分類が当面の中心的な作業となる。続いて、トリニダード独立前に彼がイメージしていた「国家」と「芸術」の関係について考察をおこなう。同時にトリニダード・トバゴの西インド大学セント・オーガスティン校へ赴き、ジェイムズの教え子でもありトリニダード初代首相となったエリック・ウィリアムズが残した文献の収集をおこなう。その後、ジェイムズとウィリアムズの論の相違について考察し、両者が国家観においてなぜ対立することになったのかを明確化してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本助成金の支給が決定したのちに、勤務する大学から「学長特別研究費(長期)」を支給されることが正式に決定した。両研究課題は緊密に関係しているものの、2013年度は後者の研究(10月から3月までの半年間)を優先しておこなったし、国際学会での発表なども後者の研究費にて執行することができた。それゆえ、必然的に科研費の申請当初予定していた研究(とくにトリニダード・トバゴでの資料収集)の一部を次年度に繰り越すこととなった。 次年度使用額として生じた491,639円は、8月~9月にトリニダード・トバゴの西インド大学セント・オーガスティン校にて資料収集する際の、旅費および人件費・謝金として使用することを計画している。
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