2014 Fiscal Year Research-status Report
1920年代アフリカ系アメリカ女性作家による抵抗の言語行為とその継承
Project/Area Number |
25370293
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
鵜殿 悦子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (00128638)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 英米文学 / アフリカ系アメリカ文学 / 物語の枠組み / 人種 / ジェンダー / セクシュアリティ / 語りの構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平成24年度までの科学研究費補助金で明らかになった点―トニ・モリスン文学とハーレム・ルネサンス期アフリカ系アメリカ文学の修辞的関係―を基盤として、1920年代ハーレム・ルネサンス期のアフリカ系アメリカ女性作家と現代アフリカ系アメリカ女性作家とのインターフェイスを探ることにある。とりわけ、ネラ・ラーセンとジェシー・レドモン・フォーセットの文学テクストに光を当て、現代文学テクストとの比較・参照のうちに相互の共鳴関係を掘り下げてゆきたい。検証に際しては、ポストコロニアル批評の分析手法を援用して過去の文学作品の再検討を行い、現代アフリカ系アメリカ文学への継承・影響関係を考察する。 平成25年度は、ポーランド、シュチェチンで開催されたInternational American Studies Association第6回国際大会において、ネラ・ラーセンの作品と、当時のイギリス女性作家シーラ・ケイスミスの作品との影響関係を分析した、"Trans-Atlantic Textual Exchange: Nella Larsen's 'Sanctuary' and Sheila Kaye-Smith's 'Mrs. Adis'"と題する研究発表を行い、聴衆から貴重なレスポンスを得た。同時に、ニューヨークにおいて実地調査と資料収集を行った。 平成26年度は、ハーレム・ルネサンス期のアフリカ系アメリカ女性作家とモリスンを始めとする現代作家の文学テクストの読み直しと、関連参考文献の読み込みを進めた。効果の見えにくい地味な作業ではあるが、文学研究においてはもっとも重要な作業工程である。同時進行しているモリスンの論文執筆が当該研究の進行を遅らせているが、現代文学とのインターフェイスを検証することが本研究のテーマであるので、このこともやむを得ないものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[1.テクストと文献の読込み] ほぼ予定どおりに行うことができた。 [2.論文の執筆] アメリカ学会におけるアフリカ系アメリカ文学部門での研究発表にそなえて、英語論文執筆を進めた。 同時に、単著書『トニ・モリスンの小説』の出版と、編者となって企画を進めている論集の出版のために、モリスンに関する最新の情報をサーヴェイした。この作業のために予定していたラーセン論文の執筆が遅れることとなった。 [3.資料の整理] 昨年度アメリカで収集した調査資料を整理した。
|
Strategy for Future Research Activity |
[1.文献とテクストの読み込み] 前年度同様、ハーレム・ルネサンス関係文献の読み込みを進める。27年度の終りまでには、研究の全体像がほぼ明らかになってきているであろう。 [2.研究発表] 合衆国で開催されるアメリカ学会のアフリカ系アメリカ文学部門での研究発表(英語)を行う。 [3.論集の出版と論文の執筆] 平成27年度は、編著書『新たなるトニ・モリスン(仮)』の編集作業をする。この論集の1~2章を執筆する。その論文は、現代アフリカ系アメリカ女性作家の文学テクスト(モリスン)と1920年代の文学テクスト(ラーセン)のインターフェイスを探ることを目的とする。 [4.学会シンポジウムを企画する] 27-28年度に、アフリカ系アメリカ文学研究者をオーガナイズして、日本英文学会大会もしくは日本アメリカ学会大会において、シンポジウム「ハーレム・ルネサンス期のアフリカ系アメリカ女性作家と現代作家のインターフェイス(仮)」を企画したいと思う。27年度に準備して28年度に実施することになろう。シンポジウムにおいては、鵜殿が司会・講師を務め、本研究の成果の一部を発表する。より多くの研究者のレスポンスを得ることにより、本研究に一層の深みをもたせたい。 [5. 29年度からの研究計画立案と著書の計画] 29年度からの研究計画を立案し、その研究と合わせて、単著書『1920年代アフリカ系アメリカ女性文学における抵抗の言語行為とその継承(仮)』の出版に向けて準備をする。
|
Causes of Carryover |
平成26年度ニューヨークでの実地調査と資料収集を行い、同時に、合衆国で開催されるアメリカ文学会に出席する予定であったが、公務のためそれだけの日程を確保することができなかった。前記の作業ができなかったため、研究に遅れが生じている。また、単著『トニ・モリスンの小説』の執筆が長引き、当該研究の工程へとずれ込んだが、その作業は何とか完成させたので、次年度からは正常に作業を進めることができると思う。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、昨年度実現できなかったニューヨークでの実地調査と資料収集を実行したい。また、合衆国で開催されるアメリカ文学会に出席し、研究発表を行う予定である。前年度の遅れを取り戻すために、今年度はピッチを上げて作業を進めたい。 また、単著書『1920年代アフリカ系アメリカ女性文学における抵抗の言語行為とその継承(仮)』の出版に向けて、原稿を鋭意執筆する。
|