2013 Fiscal Year Research-status Report
19世紀の東西異文化交流-欧米西洋人劇団と日本のシェイクスピア上演
Project/Area Number |
25370295
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
小林 かおり 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (40308820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シェイクスピア / 異文化交流 |
Research Abstract |
本研究は明治の終わりから大正にかけて日本を訪れた欧米西洋人劇団のシェイクスピア上演が、坪内逍遥や小山内薫など日本の知識人に与えた影響を明らかにすることを目的とする。その際、大英帝国諸国を巡業していた西洋人劇団が現地の知識人や人々に与えた影響と比較検討し、東西の異文化交流の在り方を探るものである。25年度は日本における西洋人劇団の上演、とくに1912年に来日したウィルキー一座のシェイクスピア上演を国内外での資料収集をもとに明らかにした。故名古屋大学名誉教授升本匡彦氏が個人的に遺してくださった日本を巡業していた西洋人劇団に関する膨大な資料の整理を引き続き行った。升本氏は1912年に来日したウィルキー一座のオーストラリアでの巡業に関する調査を終えているばかりではなく、ウィルキー夫人とのインタビューも行っている。が、これらのデータは升本氏の自宅から小林の研究室に移動したものの、多くのデータは未整理のままである。また、横浜の開港資料館にある横浜居留地に関する資料、東京の早稲田演劇博物館に残っている坪内逍遥に関する文献、神戸体育館劇場、長崎パブリックホールでの西洋人劇団の興行に関する資料、英国の大英図書館に残っている当時の植民地で発行されていた新聞に掲載された西洋人劇団のシェイクスピア上演の批評、及び当時植民地の知識人が残した私文書・書簡、ロンドン演劇博物館に残る上演記録等に引き続き目を通した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り研究は進んでいる。成果発表も十分にこなしていると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成26年度以降の研究計画・方法】 まず、日本の知識人の西洋人劇団のシェイクスピア上演の受容を他のアジア諸国、とくに帝国主義の一環として受容せざるを得なかったインド、シンガポール等と比較して明らかにする。日本でのシェイクスピア上演の受容を他のアジア諸国と比較するために、インド・デリー大学教授Poonam Triveridi氏、中国・中央戯劇学院教授Shen Lin氏、シンガポール国立大学教授Yong Li Lan氏、マレーシア国立大学教授Nurul Low氏に研究の支援をお願いする。 第二に、明治期の日本の知識人は西洋文明の鏡としてシェイクスピア劇を導入し、西洋人を「他者」として文化的アイデンティティーを構築していた。しかしながら、日清・日露戦争を経て、台湾、韓国を併合すると、アジアに新たな「他者」を見出し、彼らの西洋文明に対する姿勢は徐々に変わっていく。アジアに「他者」を見出し、日本の知識人の文化的アイデンティティーが変遷していったさまを、彼らの西洋人劇団によるシェイクスピア上演に対する印象の変遷から紐解きたい。 以上の研究の成果を国内外の学会等で発表する予定である。具体的には日本シェイクスピア学会および国際シェイクスピア学会で発表する予定である。
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Research Products
(6 results)