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2014 Fiscal Year Research-status Report

ガイドブックの詩学―19世紀湖水地方における文化的景観の変容と文学観光

Research Project

Project/Area Number 25370298
Research InstitutionKobe City University of Foreign Studies

Principal Investigator

吉川 朗子  神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (60316031)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2017-03-31
Keywordsワーズワス / 文学観光 / 英国湖水地方 / 文化的景観 / 旅行ガイド / 自然感受性 / 環境意識
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度は次の点を中心に研究を進めた。
①昨年国際学会で発表した研究成果を論文 'A Guide that does not Guide: The Duddon Sonnets as a Guide to the Lakes'としてまとめた。ワーズワスの詩が持つ案内書的(啓蒙的)な役割について具体的な検証を行った。
②①に引き続ける形で『逍遥』(1814)を取り上げ、ガイドブックの詩学という観点から読み直した。『逍遥』は現在ではあまり人気のない作品だが、湖水地方への観光案内書に引用されたことにより、旅行者たちに自然に対する感受性、環境意識を養っていくことになった。他方旅行者たちは、案内書内の引用を通してワーズワスの詩をどう読めばいいかを学ぶことにもなった。このように、ワーズワスの詩が環境保護と観光産業を両立させる湖水地方の文化的景観の基礎作りにいかに貢献し、他方で観光を通してワーズワス詩を受容する感受性がいかに養われていったかという双方向的な影響関係を、具体的な作品分析を通して明らかにできた。その成果は8月に行われたイギリスでの国際学会での招待講演で披露した。
③文学観光というと大衆的・商業的響きがあるが、もともとは個々人が読書行為の延長として、文学的連想に満ちた土地を訪れて瞑想に耽る文学巡礼から発展したものである。そうした個人的で内省的な文学巡礼者として20世紀初頭の詩人エドワード・トマスを取り上げ、風景のなかを旅する詩人の内的・外的観想(内省・観察)について考察し、京都ノートルダム女子大で行われた国際学会で研究発表をおこなった。
④文学観光を庶民的なレベルにまで広めるにあたり、ガイドブックと同じくらい重要な役割を果たしたウィリアム・ハウイットについて調査し、その媒体的役割について考察した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

①ワーズワス作品の検証:平成25年度の『ダドン・ソネット』につづいて、『逍遥』のガイドブック的な役割を検証できた点は評価できる。いずれも現在ではワーズワスの代表作品とはみなされていないが、実はワーズワス作品を受容するための感受性を一般読者のレベルにまで広めたのはこれらの作品であった―正確に言えば、これらの作品のうちガイドブックに引用された個所であった、ということが実証できたからである。他方、湖水地方における文化的景観の形成にとってワーズワスが果たした役割も明らかになった。
②ガイドブックの検証:文学作品のどのような個所が引用されているのかを検証すると、視覚に訴える描写の人気がある一方で、絵では描写できない、聴覚や嗅覚、触覚、さらには心に訴えかけるような詩行も多いという意外な結果が明らかになった。時代が下るにつれて観光が商業化していくことは避けられないが、他方で旅行体験・自然のなかに身を置くという体験の心的効果を重視しようという面も見られることが明らかになった点は意義深い。論文にまとめるべく更なる考察を進めたい。
③挿絵の検証:19世紀のガイドブックへ挿入された挿絵の変化を辿ることでLandscape型からPortrait型への変化という流れが明らかになった点は評価できるが、旅行者たちの空間認識の変化、文化的景観の生成・変化という観点とまだうまく結びついていないので、さらにリサーチ・考察をすすめたい。
④派生的研究として、ウィリアム・ハウイットやエドワード・トマスについてリサーチし、湖水地方以外の英国各地における19世紀から20世紀初頭にかけての文学観光発展の有様について知ることができたのも、意義深いことであった。

Strategy for Future Research Activity

湖水地方における文学観光の発展・変容と文化的景観の変化について、引き続き考察する。旅行者たちの景観や空間の認識の仕方がどう変化したのかを考えるにあたって、当初計画では主に挿絵・版画などの視覚芸術の検証を中心に行う予定であったが、これに加え、鉄道や道路建設といった技術開発が与えた役割についても考えたい。移動手段の変化は空間認識の変化に大きく関与していると思われるからである。また、観光開発と景観・環境保護意識との両立に当たってワーズワスやラスキンをはじめとする文人たちの言説が果たした役割(あるいは果たせなかったこと)についても、考察していきたい。年に1,2度は内外の学会・研究会で発表するよう準備をし、内外の研究者たちとの意見交換もひきつづき充実させたい。

  • Research Products

    (3 results)

All 2015 2014

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] A Guide that does not Guide: The Duddon Sonnets as a Guide2015

    • Author(s)
      Saeko YOSHIKAWA
    • Journal Title

      神戸外大論叢

      Volume: 65 Pages: 103-116

    • Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] Edward Thomas: A Contemplative Poet2015

    • Author(s)
      Saeko YOSHIKAWA
    • Organizer
      Kyoto Conference on Coleridge and Contemplation
    • Place of Presentation
      Kyoto Notre Dame University
    • Year and Date
      2015-03-27
  • [Presentation] The Lake District through The Excursion2014

    • Author(s)
      Saeko YOSHIKAWA
    • Organizer
      Wordsworth Summer Conference
    • Place of Presentation
      Rydal Hall, UK
    • Year and Date
      2014-08-12
    • Invited

URL: 

Published: 2016-05-27  

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