2014 Fiscal Year Research-status Report
<女の悲劇>の再評価―18世紀劇場とセンチメンタリズム言説の影響関係に関する研究
Project/Area Number |
25370300
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
福士 航 東北学院大学, 文学部, 准教授 (10431397)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 英文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来は取るに足らないサブジャンルとされた<女の悲劇>'she-tragedy'が、18世紀劇場文化の発展に重要な貢献をしていたことを明らかにすることを目指す。<女の悲劇>が表現する「感情」を鍵語とし、演劇テクスト、演技理論、観劇記録などを総合的に検討し、「感情共有の体験」を提供することが、劇団の根本的な目的であったことを確認する。悲劇の表現すべき感情は、アリストテレス以来、恐怖と憐れみの二つとされてきたが、<女の悲劇>はより「売れる」感情であった「憐れみ」に特化し、どのような人物がどのような状況に陥ったときに観客はもっとも同情できるのか(それにともなって涙を流すことができるのか)を追求したジャンルであったことを明らかにしたい。 平成26年度には、基礎研究に重点を置き、特に演技理論の精読を中心に行った。The Life of Mr. Thomas Betterton (1710)において、感情共有の体験を劇団は提供すべきだと主張されていることを確認した。また、観劇記録を収集・分析し、<女の悲劇>群の主演女優Elizabeth Barryに対する観劇者のコメントにも、彼女の感情表現の素晴らしさを指摘するものが多数あることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎研究を主な課題とした当該年度において、精読すべき演技理論テクストの分析は終えた。一方で、センチメンタリズム言説の一端を担った道徳哲学テクスト等の分析を十分に進めることができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、成果論文の作成を目標とする。そのために、学会・研究会等で成果発表を行い、さらに議論を洗練させることを目指す。 上記の通り、道徳哲学テクストの分析を十分に進めることができなかったが、18世紀哲学や道徳哲学に造詣の深い研究者を招く(あるいは私が出向く)形で研究会を開催し、専門的知見や助言を得る機会を持つことで、やや遅れた部分の研究を進める。
|
Causes of Carryover |
研究にやや遅れが生じ、予定していた学会発表や資料収集のための旅費に支出がなかったため。また、図書購入の物品選定に予定以上に時間がかかってしまったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中の学会発表・研究会参加のための旅費と、資料収集のための複写費、図書を購入する際の物品費に充てて使用する。
|