2015 Fiscal Year Research-status Report
<女の悲劇>の再評価―18世紀劇場とセンチメンタリズム言説の影響関係に関する研究
Project/Area Number |
25370300
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
福士 航 東北学院大学, 文学部, 准教授 (10431397)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 英文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1680年代から1710年代にかけて流行した〈女の悲劇(she-tragedy)〉を、18世紀劇場文化とセンチメンタリズム言説の関連という文脈で再評価することを目的とする。 今年度は、she-tragedy で表現される感情と、それを観客がいかに受容していたかという見地から、主要な「女の悲劇」のうちThomas Otwayの_The Orphan_と、Thomas Southerneの_The Fatal Marriage_を比較検討し、中間報告論文「She-tragedyにおける感情--_The Orphan_と_The Fatal Marriage_を中心に」にまとめた。劇テクストと観劇体験記録とを検討し、演劇制作者側はあきらかに観客を「いかに泣かせるか」に主眼をおいていること、観客側は「いかに自分は苦境にある人間に憐れみの気持ちを持っているか」を示すため、言い換えるといかに自分が「道徳的」な人間であるかをパフォーマティヴに示す涙を流していたかを明らかにした。センチメンタリズムのパフォーマティヴな性質と、「他の観客の前で堂々と泣ける」she-tragedyとは、親和性の高いものだったことを指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
演劇テクストと観劇体験記録をおもに検討した中間成果報告論文を発表し、18世紀劇場文化におけるshe-tragedyの重要性を確認することができたため。 ただし、劇場文化とセンチメンタル言説との結びつきについては、未だに決定的なリンクを主張できていないため、継続して調査している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、成果報告論文の作成を目的とする。18世紀劇場と道徳哲学などセンチメンタリズム言説との接点を探る研究を進める必要があるため、学会などで成果報告し、フィードバックをうけて更に研究を進めることを目指す。
|
Causes of Carryover |
9月30日以降、育児休業を取得したことにともない、年度後半に科研費の使用がなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度9月から業務に復帰予定であり、その後は通常の研究体制に復帰する。主に図書購入費と学会参加のための旅費に充てる。
|
Research Products
(1 results)