2013 Fiscal Year Research-status Report
アンテベラム期米国におけるドメスティシティ、その汎テクスト的な解釈枠設定の試み
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25370301
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
増田 久美子 駿河台大学, 現代文化学部, 准教授 (80337617)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 19世紀アメリカ合衆国 / ドメスティシティ |
Research Abstract |
本研究はアンテベラム期米国の文学作品や家庭小説を中心としたテクスト分析を通して、ドメスティシティ(domesticity)という概念による19世紀アメリカ合衆国の文化形成を綿密に検証し、さらに同概念の包括的構築を目的とするものである。とくに、もっとも影響力のあったドメスティシティ論者のひとり、セアラ・ヘイル(Sarah Josepha Hale, 1788-1879)の家庭小説を基軸とし、ヘイルの中心的思想であった「女性の領域および女性の感化力の拡大」にかかわる論点として、平成25年度は「家庭管理小説にみられる家事労働と移民使用人問題」に取り組んだ。 そのような研究課題を考察するにあたり、まずは「家庭管理」を題材とした小説や女性誌に掲載された物語等のテクストを一次資料として収集し、整理・検討を行った。また、2013年11月21日から24日まで開催されたAmerican Studies Association Annual Meeting(米国ワシントンDC)に参加し、19世紀米国の女性と家庭に関わるテーマのシンポジウムや発表に出席することによって、有益な情報や資料の収集に努めた。そして、収集した資料の分析を開始し、最新の研究動向に配慮しながら先行研究をまとめ、2本の論文を執筆した。具体的に得られた成果は以下の通りである。 「家庭管理小説」には、当時の家内賃金労働や使用人問題が反映されていると思われる。ヘイルの小説にみる「女主人と使用人」および「夫と妻」の関係性を中心として、中流階級家庭内で構築される階級の意味や、家事労働力のおもな担い手であったアイルランド系移民の問題を視野に入れながら、家庭管理・家事労働にみるドメスティシティの意義を探った。そうすることにより、「男女の領域分離主義」が露呈してしまう性差と公私空間の関係性について、領域論上の矛盾の存在が明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次資料および二次資料を収集したのち、比較的効率よく資料のデータベースを作成することができた。また、資料分析や先行研究に対する洞察を円滑に行い、論文を執筆した。さらに、米国での学会に参加することによって、重要な研究情報および知見を自己の研究に加味することができ、大きな成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の全体的構想である「女性の領域および女性の感化力の拡大」にかかわる論点のうち、「アメリカ南部およびリベリア植民プロパガンダ小説にみる植民地主義と自由労働問題」という研究課題に取り組む予定である。この課題を遂行するにあたり、19世紀アメリカの自由労働研究や植民地研究の関連図書、人種問題や奴隷制廃止論などの研究書を幅広く収集することから始めることとする。
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Research Products
(2 results)