2017 Fiscal Year Annual Research Report
Domesticity and Its Intertextual Comprehension in Antebellum America
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25370301
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
増田 久美子 立正大学, 文学部, 教授 (80337617)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ女性文学 / 19世紀アメリカの文化と社会 / ジェンダー思想 / 家庭性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アンテベラム期米国の女性作家によるテクスト分析を通じて「家庭性」(domesticity)という概念がどのように19世紀アメリカの文化形成に寄与していたのかを検証し、同概念を包括的に定義する試みである。最終年度である本年度は「家庭性」とは何かを概括するため、これまで取り上げてきたセアラ・ヘイル(Sarah Josepha Hale, 1788-1879)の著作およびそれに関する拙論を見直した。ヘイルは当時、多大な影響力のある女性誌の編集者として活躍した人物であるが、本研究ではヘイルを小説家として捉え、家庭性に関わる小説を中心に分析を行ってきた。見直しの対象となったテクストは、『女性講演家』(1839)、『ノースウッド』(1827)およびその改訂版(1852)、『家庭管理の物語』(1845)、『ボーディングアウト』(1846)、『リベリア』(1853)、女性伝記集として上梓された『女性の記録』(1855)である。 いずれの作品も、従来では女性が政治領域から退き、男女の平等ではなく差異を強調した「領域」と家庭性を讃美する点で、きわめて保守的なテクストと評価されてきた。だが本研究は、ヘイルの中心的思想の基盤であった家庭性が、まさにそのイデオロギーの矛盾を利用した戦略であったことを明らかにした。家庭性とは、法的・政治的権利が付与されない白人女性たちを私的領域へと取り囲み、「リスペクタブル」な家庭の形成に従事する主婦を仕立てる身ぶりをするが、その一方で、女性が権利なき者であっても、社会において重要な「女性市民」として活動し、領域のイデオロギーに抵触することなく「女性の感化力」以上の能力を行使する可能性を示したのである。さらには、ヘイルの家庭性には、女性が一個人としての成長と充実を目指して「母親」や「妻」であることさえも否定しうる革新的な思想が含まれていることも分析された。
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Research Products
(2 results)