2014 Fiscal Year Research-status Report
ポピュラーメディアにおけるシェイクスピアの言及と消費に関する研究
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25370307
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
南 隆太 白百合女子大学, 文学部, 教授 (60247575)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シェイクスピア / ポピュラーカルチャー / 翻案 / 受容 / マンガ / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、学会における研究発表を中心に、これまでの研究成果の海外への発信をさらに加速させ、海外の研究者の視点を取り入れながら、グローバルな視点から日本で創作されるポップ・シェイクスピアあるいはNaught Shakespeareを考察することを中心に進めてきた。その際に重要な意味を持つのが、(1)実作者(マンガ家)との共同研究を通しての海外研究者と受容者へのインパクトの確認、(2)日本のマンガ・アニメが特に浸透している国(フランス、イギリス、台湾)における若手研究者および学生の受容の在り方の検討、(3)研究成果の教育現場への導入の実験的な試み、の3点であろう。 (1)(2)フランスのパリで開催されたシェイクスピア生誕450周年記念学会において、マンガ家を招いたセミナーを企画し、実作者と研究者それぞれの視点からポピュラーカルチャーにおけるシェイクスピアの再創造を検討した。 また、同じマンガ家とイギリスTeesside Univ.で毎年開催されるANIMEXというアニメとマンガの学会イベントでもセミナーとワークショップを企画し、マンガによる再創造およびマンガ・テクストの分析とシェイクスピアのテクスト分析との関係を論じた。さらにこのイベントでは大学生や大学院生たちからのフィードバックを得る機会を得、シェイクスピアとマンガ・アニメとの関係が従来のような補助教材ではなく、新しいproductionの形としてすでに認知されていることが確認できた。 (3)これまで共同に協力をしてきてた台湾の静宜大学英語英文学科のYilin Chen氏が中心になるMOOCsによるシェイクスピア講義において、マンガ家との共同授業を10コマ(15分×10)収録して、これまでの研究成果の教育現場での活用を、開かれた形で実現するための試験的な試みを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際学会での研究成果の発表を通して、グローバルな視点から日本のポピュラーカルチャーによるシェイクスピアの再創造と消費を考えるという初期の目標は予定通りに進展している。さらに本年度は、研究の進行に合わせて意見交換や創作に関するインタビューを行ってきたマンガ家の協力を得て、マンガやアニメによるシェイクスピアの再創造を研究と創作の二面から検討し広く研究者や学生に公開できたために、受容の在り方などについて新しい知見を得られ、当初予定していたFandom研究の幅を広げることができた。 また、今回台湾の静宜大学の英語英文学科の全面的な協力の下MOOCsの制作に関わることは当初期待していなかった成果が少なくとも2つあったと考えている。(1)MOOCsの担当コマの中で、台湾の研究者だけでなく台湾のマンガ家の創作するシェイクスピア作品についても、実際にマンガ家に直接話を聞くことができた。その結果、同じマンガ形式による再創造であっても背景となる文化の違いにより同じ作品(『ハムレット』)をマンガに翻案する際にも、文化的に受容および理解可能な変更が行われることが確認でき、シェイクスピアの受容と変容のプロセスを具体的に検討できた。(2)ポピュラーカルチャーにおけるシェイクスピアの再創造について、MOOCsという開かれた形の教育(授業)の中で講義をし、具体的な説明を行い、さらに静宜大学の学生たちとの授業でのディスカッションなどの機会を得ることで、本研究成果の一部を公開できた。これは学会や学術誌での発表と並んで大きな成果であると確信している。 また昨年度からの海外国際学会での研究発表の評価が高いため、現在3つの英語圏の出版社が出す予定の論文集への執筆を行い、出版準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、(1)研究の国際化、(2)研究成果の発表の国際化、(3)研究成果の教育現場への導入、の3つである。ただし、これらの計画の推進にあたり現在課題となっているのが、急激な円安に伴い、当初予定していた海外研究者を招いた国際研究集会実施が難しくなっていることである。そこで、規模を多少縮小しながらも、上記3点について以下のような形で研究を推進する。 (1)米国、英国、イタリア、台湾、フィリピン、中国の研究者との研究協力関係は一層増している。この共同研究の成果として現在論文集3点の出版準備をしており、一層の研究における交流をすすめている。また本研究課題が終了する翌年2016年7月に開催される World Shakespeare Congressでのセミナーを米国とイタリアの研究者と協力してセミナーを企画。運営することになっている。南米やアジア諸国の研究者も交えた一層の研究の国際化を本年度は進める。また本セミナーの準備としてセミナーの共同運営者との綿密な連携も進める。 (2)研究成果発表は、すでに述べたように現在英語圏より3冊の論文集という形で進んでいるが、当初予定していた国際研究集会の開催が円安の影響もあり予算的に難しくなったため、これに代えて2015年度は、日本シェイクスピア学会において本研究の成果発表かねて、海外の研究協力者2名を招いたセミナーを開催する。このセミナーにより、研究成果の発表と国内の研究者への成果発表、さらにこれまで研究協力関係のなかった国内の研究者との意見交換も期待している。 (3)2014年度に台湾静宜大学英語英文学科のMOOCsプロジェクト:シェイクスピアが高い評価を受けたため、15年度はさらにこのMOOCsプロジェクトを拡大することが計画されている。より多くのそして広い層への研究成果発表を実現する。
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