2014 Fiscal Year Research-status Report
黒人文学の興隆をめぐる、アンダソン、ヘミングウェイ、ウィンダム・ルイスの相克
Project/Area Number |
25370308
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中村 亨 中央大学, 商学部, 教授 (70328029)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アメリカ文学 / 人種 / モダニズム / 小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hemingway のパロディ作品 The Torrents of Spring とそのパロディの標的であるSherwood AndersonのDark Laughterとの関連を考察し、論文にまとめた。 両者の関連を探るために両テクストを子細に検討し、また伝記的事実との関わりにも目を向けたが、それだけにとどまらず、The Torrents of Springの創作過程も検討の視野に入れるためにアメリカ合衆国のジョン・F・ケネディ図書館に行き、The Torrents of Spring の草稿を調査した。 それらの検討と調査の結果明らかになったのは、単純素朴な黒人礼賛に終始する失敗作Dark Laughterに対しヘミングウェイがパロディで適切な批判を加えたと考える従来の通説とは異なり、ヘミングウェイがDark Laughterに深い衝撃を受け、その衝撃の痕跡がThe Torrents of Springに記されているということである。 Dark Laughter で否定的なかたちで提示されるシェル・ショックを受けた元兵士の描写はヘミングウェイにとって拒絶反応を引き起こしはするが真に迫るものだったのであり、その小説で示されるシェル・ショックの兵士と非理性的・衝動的存在としての黒人との間のイメージ上のつながりは、ヘミングウェイがパロディの中で懸命に否定してはいるものの彼の作品の中につきまとう。 研究の成果は今年単行本として出版されるヘミングウェイについての共著の論文集の中に収めれれることになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
草稿調査では期待通りの成果を収めることができ、その調査を踏まえた完成稿の検討も予定通り行うことができた。 また研究の成果を単行本の学術書に掲載される論文としてまとめることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はWyhdham Lewis の文学に焦点をあて、ルイスとアンダソン、ルイスとヘミングウェイとの関係を検証していく予定である。
|
Causes of Carryover |
当初はHemingwayについての調査と検討は2014年度でほぼ完了させ、2015年の春からはWyndham Lewis についての調査に研究の中心を移すつもりでいたが、Hemingway の草稿についてのアメリカ合衆国での現地調査の結果、ヘミングウェイについての調査の範囲をさらに拡大した方が全体の研究としてはより実りがあることが分かった。 そのためにLewis についての調査は最初の計画に比べるとまだ進んでおらず、Lewis 関連の文献購入費、調査旅行費も計画よりも使用額はまだ少ない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
Wyndham Lewis に関する研究と調査の割合を拡大させ、研究の成果を学会で発表する。そして学会で得た意見を踏まえて論文をまとめる。
|
Research Products
(2 results)