2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370320
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
廣田 園子 京都女子大学, 文学部, 准教授 (30368550)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 英米文学 / 文学一般 |
Research Abstract |
本研究は、今日の文学・文化研究における最も重要な批評概念の一つであるインターテクスチュアリティを軸に、20世紀を代表する英国人作家Virginia WoolfのMrs Dalloway (1925)を巡るウルフ本人及び後世の作家たちによる「変奏」の各テクストの意義を検証することが目的である。平成25年度における研究の中心は、アメリカ人現代作家Michael Cunninghamが1998年に発表したThe Hoursに関する論文執筆にある。『ダロウェイ夫人』を中心とするウルフのフィクション及びノンフィクションの多岐に亘る諸テクストとのパラレルを分析し、本作が『ダロウェイ夫人』について如何なる政治的・文化的視座に立ち、モダニズム文学の代表的キャノンへの再解釈を提示しているかを検討する本論文は、現在推敲の最終段階にある。 加えて本研究に関連し、『ダロウェイ夫人』を下敷きに2003年のロンドンを表象した Ian McEwan による Saturday (2005)に関する英語論文を発表した。また同じく現代作家によるモダニズム文学テクストのアップデートの代表例とも言える、Zadie Smith 作の On Beauty (2005) に関する日本語論文を発表した。本論執筆にあたり現代美学に関する新たな着想を得たことから、それらを発展させるべく、2013年8月29日から9月1日にかけて英国サセックス大学で開催された Modernist Studies Association の第15回年次大会 “Everydayness and the Event”において セミナーに参加し、”A Decayed Wife and Rembrandt: Everyday Aesthetics in Zadie Smith’s On Beauty”を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究として計画されていたとおり、マイケル・カニンガムの『めぐりあう時間たち』(2005)におけるヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』(1925)の変奏が、モダニズム文学のキャノンに如何なる再解釈をもたらしているかについて考察することができ、更に当該テーマに深く関する英語論文及び日本語論文各一編の発表、国際学会における発表一件という実績から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1973年にStella McNicholによって編纂されたMrs Dalloway’s Partyには、ウルフが『ダロウェイ夫人』執筆前後に創作した7編の「スケッチ」が収められている。ウルフの他のテクストには見られないこうした変奏の短編と共に、クラリッサが初めて登場するウルフの長編小説第一作 The Voyage Out をも再検証することで、後世の作家に変奏の欲望をかき立ててやまない『ダロウェイ夫人』の所謂「オリジナル」の成立過程を考察することを目指す。更に、『ダロウェイ夫人』では脇役に留まっているダロウェイ夫人の保守的な夫を主人公に据えた Robin Lippincott 作の Mr Dalloway (1998) について検証する予定である。Clarissaの夫を同性愛者と設定した本作は、ウルフ研究において大きく取り上げられることはなかったが、しかし文学キャノンの「翻案」の古典とも言えるJean Ryesの Wide Sargasso Sea (1966)と比較検討を試みることで、本作が『ダロウェイ夫人』の再解釈に繋がり得る変奏を提示しているか否かを考察することを目指す。
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