2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370320
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
廣田 園子 京都女子大学, 文学部, 教授 (30368550)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モダニズム / アダプテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果の中心は、作家ヴァージニア・ウルフ (1882-1941) の代表作『ミセス・ダロウェイ』(1925) の主人公クラリッサ・ダロウェイの、脇役としての誕生から長編小説のヒロインへと進化する軌跡、及び後世の作家たちによる様々な翻案及び改変の系譜を検証することで、文学史上においても稀有な一個のキャラクターの「転生」の意義を考察し、またその「転生」を可能としている本キャラクターのモダニティを分析したこれまでの研究の集大成として、単著『ミセス・ダロウェイの永遠の一日――モダニズム・アイコンの転生の系譜』を「京都女子大学研究叢刊」の一巻として同朋舎より2016年10月に出版したことである。 三部構成である本書は。第一部(二章構成)でウルフの第一作長編小説である『船出』(1915) にクラリッサが脇役として初めて登場し、その後短編「ボンド・ストリートのミセス・ダロウェイ」(1923) の主人公となり、長編『ミセス・ダロウェイ』の素地を築くまでの経緯を考察し、初登場の際からクラリッサが体現していたモダニティにより、ウルフが自らとはかけ離れた政治家夫人というキャラクターに様々な改変を施していくことが可能となったプロセスを検証した。第二部(二章構成)では『ミセス・ダロウェイ』におけるクラリッサの一日が提供する多種多様な批評的アプローチを概観することで、本キャラクターのモダニティに関する議論を更に発展させ、そして第三部(三章構成)では、英米の現代作家による『ミセス・ダロウェイ』の翻案例を三作品取り上げ、現代に甦るクラリッサに施された改変の詳細を検証した。
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Research Products
(1 results)