2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田口 哲也 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (00145103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CROSS R・J. 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (70278464)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アジア系英国人 / 9・11 / 人種関係 / ポストコロニアリズム / グローバル化 / 現代英文学 / 英国映画 |
Research Abstract |
平成25年度は主に次ぎの2点を中心に研究を進めた。1)人種関係に大きな変化が生じる契機のメカニズムの解明。2)英国における人種関係の変化の流れを具体的な文化現象を用いて明らかにする。 1)については研究代表者の田口と分担研究者のロバート・クロスが研究会を組織して具体的に検討を進め、理論化そのものは田口が行った。研究背景や目的にも詳述したように、人種関係は世界大戦のように政治的版図が大きく書き換えられる時に大きな変容を受ける。今回注目したのは、9・11によってこの構造が大きく変化し、版図そのものが変化しなくても経済や文化や情報がグローバル化した世界においては、ある種の文化的な緊張関係が生まれてくるという点であった。そこで第一次大戦後、第二次大戦後の人種関係の変化をカテゴリー分類してマッピング化し、9・11以降の状況の変化と対応させた。その結果、移民の量とメディアの質の変化が大きな役割を果たしていることが分かった。この研究成果の一部は田口が2013年11月10に開催された日本T. S. エリオット協会の第26回大会において発表した。 2)に関しては主にクロスが現地調査と作品分析を行い、その成果を田口と組織する研究会において討議した。私たちが注目したのは Sandhya Suri による "I for India" である。この作品は英国における2世代のインド系移民の意識の変化をドキュメンタリー映画の手法を用いて展開したものであり、映像的な記録の持つ特性を最大限までに応用した作品でもある。我々はスチュアート・ホールの「プロダクション理論」(1990)を援用してこの作品を分析し、移民意識の特性を抽出することに成功した。この研究成果はクロスが2014年1月にチリで開催された VII Alexander von Humboldt Conference で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は関連資料の調査・収集と現地調査、そしてこれらの調査によって得られてデータを整理して具体的な理論構築のための基盤となる土台(プラットフォーム)を構築することにあった。資料収集については研究機関所蔵、また新たに購入した資料に綿密にあたり、相当量のデータを収集し、分類・整理することに成功した。また、国内で入手不可能な資料については米国、英国、インドなどへの現地調査の際に補完的に収集することができた。また、これらの収集したデータを用いて、移民の意識がどのように形成され、またどのように変化していくのかを包括的に説明できる仮説を構築することができたのは大きな収穫であった。したがって、初期の研究目的の大部分は達成できたと言える。ただ、個々の作品分析に時間を掛けすぎて、モデルとする作品を予定していた数まで選別できなかったこと、またそのために仮説の検証が若干不完全であったことは事実であり、今後一層の努力が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論構築を深化させる上で、人種関係理論の文学作品、映画作品への応用についての理論的研鑽をさらに積む必要がある。そのためにも海外の関連学会、研究者、とりわけ英米だけでなく、アジアや南アメリカといった、かつては移民を送り出し、現在では自国でも多文化社会を抱える国や地域の研究者との相互交流や情報交換を積極的に推進して行く予定である。また、すでに収集したデータをさらに充実させ、理論構築の進展に合わせてデータベースの更新を行って行く。さらに、最終年度に予定している研究集会や、研究成果の公表方法についてもその準備と検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた国内の調査出張が本務研究機関の都合により不可能になったため。 次年度は早急に日程を調整して遅れている国内での調査出張を行い、研究を確実に実施していく。
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Research Products
(3 results)