2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370322
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松岡 信哉 龍谷大学, その他部局等, 准教授 (50351333)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エコフェミニズム / 核表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助事業二年目にあたる平成26年度は、研究計画にそって以下のように研究を実施した。
1. 自然の制御の観点から、William FaulknerとZora Neale Hurstonの作品のエコクリティシズムの立場からの比較分析を行った。とりわけ、文学言説における自然と女性の連想関係について批判的に考察するエコフェミニズムのアプローチを採用し、両作家の作品分析を進めた。研究成果は、アメリカ文学会北海道支部談話会、およびSoutheast Missouri State Universityにおいて開催されたFaulkner Conferenceにおいて発表した。これらの研究発表において明らかにしたのは、男性中心主義的な社会において抑圧される女性たちが自然として表象されていること、ならびにこれら被抑圧者が抵抗の戦略をとる時、彼女たちが男性的な価値基準を無意識のうちに採用する陥穽におちいることである。 この研究成果はSoutheast Missouri State University Pressから刊行されるFaulkner and Hurstonに収録される予定(条件付き採択。目下修正中)。
2.自然の汚染の観点から、Don DeLilloと大江健三郎の核表象の比較研究を実施した。その研究成果は目下とりまとめ中であり、すでに採択済みの日本英文学会、ならびにASLE USのconferenceで披瀝する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ文学と日本文学における自然の表象を、自然の制御と自然の汚染という二方面から照射することによって新しい知見を得ようとする本研究計画は、計画通りに口頭での研究発表および論文投稿を実施するなど、おおむね順調に進んでいる。 平成26年度に重点的に研究を進めた自然の制御の観点からの言説分析は、Center for Faulkner Studiesから刊行予定の書籍編集委員会へ投稿され、条件付き採択されている(目下修正中)。 また本研究の目的のうちの大きなものとして、文学言説における核表象分析がある。これについてもすでに構想がまとまり、国内外の学会での研究発表が採択されている。 上記二つの発表では、チェルノブイリやフクシマなどエコカタストロフィックなイベントをはさんで、Don DeLilloと大江健三郎という二人の作家が描く核の表象がどのように変化したかに重点をおいて考察を展開する予定である。 以上のように、Faulkner, Hurston, DeLillo, 大江健三郎などを対象とした、自然の制御と汚染の観点から行う文学言説分析は、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に記したように、おおむね計画通りに研究は進捗しており、平成27年度前期には自然の汚染の観点から文学言説における核表象を取り扱う内容で、国内外の学会での発表を実施する予定である。その詳細はすでに上でも述べた通りである。口頭発表後には、これらの研究成果をペーパーの形にまとめ、本研究計画の成果を総括する。 また本研究の成果を展開させ、naturecultureの概念を援用しながら文学言説における自然表象を解析する新しい研究構想を作ることを検討している。この計画は本補助事業で扱ったテーマを深化させ、また取り扱う作家や地域を広げるものになる予定であり、他の研究者と協力した研究体制の構築を目指したい。
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