2013 Fiscal Year Research-status Report
翻訳と創作の狭間で:メアリー・シドニー・ハーバートの翻訳技巧とその意義
Project/Area Number |
25370323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
竹山 友子 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (90462142)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イギリス文学 / 初期近代英国 / 詩 / 翻訳 / 女性作家 / シドニー |
Research Abstract |
本研究の目的は、初期近代英国のメアリー・シドニー・ハーバートの翻訳作品における事実上の翻案作業、特にジェンダーを意識した書き換え作業に焦点を当て、彼女の翻訳の元作品や他の作家による翻訳作品との比較を通してメアリーの翻訳技巧の特徴と意義を探ることである。 平成25年度はその目的を達成するべく、当初の予定通り基本資料の収集およびメインテキストの精読を中心に行った。メアリー・シドニー・ハーバートの The Psalmes of Davidおよびその他の翻訳作品を含む全集、原作となったペトラルカの作品、他の翻訳作品を収集した。特に今年度は、兄フィリップ・シドニーとの共訳The Psalmes of Davidの精読および研究を中心に行った。Geneva Bible, カヴァーデール訳詩編、Bishops' Bible、カルヴァンの詩編注釈、テオドール・ド・ベーズの詩編注釈、聖アウグスティヌスの詩編注解、さらにはヘブライ語の詩編を用いて、女性の身体に関わる改変箇所の研究を進めた。 具体的には、The Psalmes of Davidにおけるジェンダー的改変に焦点を当て、時代背景および執筆背景からその意図を探る研究を行った。その成果をまとめ、26年1月にアメリカで開催された The 12th Annual Hawaii International Conference on Arts and Humanities で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、メインテキストを含む一次資料の多くを入手することができた。そしてThe Psalmes of David を中心とした研究をまとめたものを国際学会で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は25年度の研究を引き続き行って考察を深めるとともに、当初の計画を多少変更してメアリー・シドニー・ハーバートのもう一つの詩の翻訳である The Triumph of Death (c.1600)の精読と研究に着手する。これは、イタリアルネサンスの代表的作家であるペトラルカの詩を翻訳したものである。ペトラルカは初期近代英国作家に多大な影響を与えた人物であり、本翻訳作品が The Psalmes of Davidとほぼ同時期に発表された作品であるため、計画を変更して本作品を研究に組み入れる。 The Triumph of Deathについては、Lord Morley (Henry Parker)による英訳作品 Triumphes of Frances Petrarcke(1540頃)との比較研究を中心に進める予定である。 The Tragedy of Antonieについては、今年度後半以降にRobert Garnier 翻訳のMarc Antonie, シェイクスピア著 Antony and Cleopatra等との比較研究に着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会発表のための旅費(おもに航空運賃)が当初の見積もりよりも安価となったため、その差額が残額となった。 26年度は当初計画に入れていなかったが、次年度使用額を用いて海外への研究出張または国際学会参加を実施したいと考えている。
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