2015 Fiscal Year Research-status Report
『緋文字』にみるカトリシズム―17世紀の大西洋を貫くキリスト教と文化の諸相
Project/Area Number |
25370325
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 関西大学, アジア文化研究センター, 非常勤研究員 (80151695)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 緋文字 / カトリシズム / ピューリタニズム / 流星 / オクスフォード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的「【緋文字】におけるカトリシズム」に沿って研究を続け、一定の成果につなげた。2015年度日本英文学会全国大会における招待発表「Dimmesdaleを読みなおす」では、従来批評家泣かせであった【緋文字】第12章の謎めいた幾つかの光の分析を試みた。まず、1640年前後の英米の英国国教会とニューイングランドのピューリタンをめぐる宗教的背景に着目する。ディムズデイル牧師がオクスフォードで天才として名を馳せていたことから、カトリックに限りなく近いロード大主教のもとでカトリック的なキリスト教に慣れ親しんでいたのでは、との仮説にたって、テキストを解釈した。17世紀のその情報をホーソーンがいかにして入手したかを、彼の英国ノートの記述と彼の参照したであろう19世紀当時の雑誌記事から導きだした。その際、文字資料のみならず図像資料をも用いた。発表概要は2015年度日本英文学会Proceedingsに掲載された。この発表の延長線上に、12月の九州ホ-ソーン協会での特別講演「ホーソーンの星と手袋」がくる。【緋文字】第12章の赤い流星と手袋の謎を考察した。 また昨年(2014年)5月の日本アメリカ文学会関西支部総会(同志社大学)での講演「ホーソーンとHeartの図像学」が同一タイトルの論文として2015年度日本英文学会支部統合号VIIIに掲載された。ホーソーン作品におけるHeartが「こころ」と「心臓」の二重の意味をとることから、ホーソーンが用いた伝統的な図像を提示して、概念とモノを重ねるホーソーンの「ロマンス」の特徴を論じた。 12月、長年にわたる特権的な研究である、 Burtonの『憂鬱の解剖』を用いてメルヴィルの【白鯨】を論じた若いころの論文「ホーソーンとその苔」との関連から、橋本安央氏の新訳をめぐる講演のコメンテイターを務め、社会への貢献として『ホーソーン研究』も継続出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
折からのISの事件のため、ロンドン、オクスフォード及びオランダでのさらなる現地調査を実施することを断念し、研究に多少の遅れが出てしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
なぜ語り手はディムズデイル牧師をケンブリッジでなくオクスフォード出身としたのかを、17世紀英米の宗教的背景、特にカンタベリー大主教ウィリアム・ロード及びジョン・ヘンリー・ニューマンのオクスフォード運動との関連で考察する。これは平成28ー31年度分として採択された研究課題へと繋がる。 へスターのカトリシズムの問題も平行して取り上げていきたい。
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Causes of Carryover |
16~17世紀イギリスのキリスト教制度の資料収集及び研究所における講義への出席を予定していたが、IS関係の事件が多発するので、オクスフォードの各カレッジ及びロンドンのウオバーグ研究所での現地視察や文書資料収集のための渡航を見送ることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ISとの関係で比較的危険度の低い旧ハプスブルグのカトリック国の教会、修道院に出かけ、古い教会建築とその付帯設備を見たり、伝統的なミサに参加したりして、プロテスタントの様式と比較検討するために旅費で使用する。
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Research Products
(7 results)