2014 Fiscal Year Research-status Report
近代初期英国バンケット・トレンチャーのアーカイブ化とその文化的背景の総合的研究
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25370327
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
山本 真司 天理大学, 国際学部, 准教授 (80434976)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ルネサンス / バンケット・トレンチャー / 英国 / 宴会 / 食文化 / エンブレム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の二年目に当たり研究調査や発表を通じて国内外の研究者と連携し、当初の目的である近代初期英国において流行したバンケット・トレンチャーの資料収集を実施し、資料のアーカイブ構築とそのデジタル化を行った。デジタル・アーカイブの整理・分析のために、収集した資料のカテゴリー別分類とそれぞれの文化的背景・意味の分析を行い、バンケット・トレンチャーが近代初期の英米において、どのように使用され、流通していたか、またそれらが欧州大陸文化からどのような影響を受けていたかについての考察を深めた。今年度は、東京の図書館で研究調査を実施すると同時に、海外では特に、ドイツ、イングランド、及びイタリアの美術館および博物館で広く現地調査を実施し、バンケット・トレンチャーの図像に関する大陸文化からの影響関係を、エンブレムやイソップ物語、植物誌などの印刷文化におけるビジュアル・カテゴリーを中心に考察し、デジタルデータの収集・整理を精力的に行った。8月にはドイツで開催された国際エンブレム学会に参加し、バンケット・トレンチャーの意匠の権威であるマイケル・バース氏やピーター・デイリー氏と情報交換した。またイングランドではバース氏の紹介で同じく大衆パンフレットの図像学の専門家であるマルコム・ジョーンズと情報交換しバンケット・トレンチャーに関する有益な情報を得ることができた。イタリアでは伊藤博明氏の案内によりバンケット・トレンチャーの意匠の元となった数々の図像を調査することができた。研究成果の一部は、天理大学おやさと研究所第271回研究報告会で発表し、「“Your fortune stood upon the casket there” (3.2.201): 『ヴェニスの商人』における「三つの小箱選び」の文化的背景とエンブレム解釈の新たな可能性」の論文として『エンブレムの諸相』にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、現在入手可能なバンケット・トレンチャーの図像資料の収集と、それに基づいて包括的アーカイブ構築とそのデジタル化を試みることである。本年度の実績概要でも記したように、研究資料調査も順調であり、また国内外の研究者との連携も良く、時間的・空間的・専門領域的に成功していると言えよう。ただヨーロッパにおけるバンケット・トレンチャーの図像資料だけに限っても扱うべき資料は膨大なのでアメリカ大陸における資料収集は翌年に実施することになるが、全体的にはおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、ヨーロッパに続きアメリカでの資料収集を実施するとともに、これまでに構築してきたバンケット・トレンチャー資料のアーカイブを順次デジタル化し、同時に英国における大陸からの印刷文化の影響を分類し、国別には主に「オランダとドイツ」からの影響を、またジャンル別分類作業としては、主に「植物誌、イソップ物語、エンブレム、その他」に分けて分析を進める。また、近年の課題であった「英国ルネサンス宴会様式とシェイクスピアを代表とする詩や演劇などの文学作品の解釈・分析」に、上記で作成したアーカイブや応用エンブレム学の成果を活用し、論文にまとめて出版し成果を公開する。また、ホームページ作成によるデジタル資料の公開も予定している。
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Causes of Carryover |
当初計画していたアメリカでの資料調査の代わりに、急遽必要となったイタリア美術館での資料調査を行ったため、渡航費・滞在費の差額により次年度使用額が生じる結果となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度のアメリカにおける美術館や博物館における追加資料収集、および複写代に必要な経費に充当する予定である。
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Remarks |
本年度にwebページを準備中。来年度に公開予定。
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