2013 Fiscal Year Research-status Report
グレアム・グリーン文学と第二次世界大戦後のメディア・ポリティクス
Project/Area Number |
25370329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
阿部 曜子 四国大学, 文学部, 教授 (60294732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グレアム・グリーン / メディア・ポリティクス |
Research Abstract |
本研究は、グレアム・グリーンの映画を中心としたメディアへの関わりを、第二次世界大戦前後から冷戦期にかけて分析・考察することにより、ポリティカルな状況下における文学の諸相を浮かび上がらせることであるが、初年度には、第二次世界大戦後に焦点を当て、戦後英米の映画が視覚文化・大衆文化として浸透していくプロセスやその背景を文学的視点から辿っていくために、グリーンのThe Third Manの映画制作、及び小説出版に関わる二次資料等を探し、それらを分析することに力点を置いた。25年度に行ったことは以下の通りである。 1.平成25年9月、グリーンのメモや書簡が多く所蔵されているテキサス大学オースティン校のハリー・ランサムセンターに赴き、映画制作前後のグリーン自筆のメモや、出版エージェンシーとのやり取りを記した手紙などの資料を見つけ、写真として納めた。 2.同じ渡米中に、27年度から行う予定の冷戦期のグリーンの小説と映画についての分析や考察に先駆けて、Our Man in Havanaの舞台ともなったキューバに最も近いアメリカ最南端の地(グリーンと同様、メディアを通してポリティカルな言説を発信したヘミングウェイの住処でもある)フロリダ州キーウェストにも足を伸ばし、冷戦期の当地の状況などについて見聞を広めた。 3.これより以前には、グリーン研究者の多く所属する日本キリスト教文学会の第42回全国大会(平成25年5月、関西学院大学)で開催されたシンポジウム(共通テーマ:「文学と宗教の対話」)にパネリストの一人として参加し、パラドックスというグリーンに特徴的な表象の在り方が彼の文学の根幹に関わるものであることを発表し、それをもとに加筆した「グレアム・グリーン、逆説の表象」という表題の論文が学会機関誌に掲載された。(『キリスト教文学研究』第31号、2014.5)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、テキサス大学所蔵のグリーン・コレクションに直接あたり、グリーンの自筆による貴重な資料を写真に収めることはできた。しかしその数が膨大であったことや学内で新たな部署の仕事に携わることになったなどの事情もあり、25年度は研究に充てる時間が十分に持てず、新しい資料に関しては整理・分類の段階であり、さらなる分析と考察が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
テキサス大学で得た資料を基に、時代的・社会的・政治的背景などを絡めつつ、映画The Third Man 制作の背景を捉えながら、グリーン作品の政治性・大衆性を考察する。できればハリウッド映画の戦後体制やポリティクスについての文献を読み、広く映画というメディアが潜在的に持つ政治性についても考えてゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、当初の計画では国内外で資料収集を行う予定であったが、アメリカ(テキサス大学)で得た資料の量が多いこともあり、国内での資料収集をしなかったためにその分の旅費が余ったこと等が、次年度使用額が生じた原因である。 26年度は、資料の整理のためのノートパソコンの購入を考えている。
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Research Products
(2 results)