2014 Fiscal Year Research-status Report
アイデンティティ探求を超えてモダニズムへ--ミュアとブラウンのバラッド的視点--
Project/Area Number |
25370330
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
中島 久代 九州共立大学, 経済学部, 教授 (90227778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 英米文学 / スコットランド詩 / バラッド / Edwin Muir / ナショナル・アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 平成26年度の研究計画:平成25年度の研究進捗が遅れたため、平成26年度も引き続きEdwin Muirの伝承バラッド評価の諸相とアイデンティティ観について研究を継続することとした。 2. 研究成果の具体的内容:Muirの重要な貢献はスコットランドの文化遺産としての伝承バラッドの評価を通して、現代詩に対する鋭い批評を展開したことにある。しかし、伝承バラッド評価の姿勢は他のスコットランドの先人文人たちより一層鮮明でありながら、彼自身のバラッド詩からうかがえるアイデンディディ観については先人たちの姿勢と比べて曖昧さが目立っている。そこで"The Enchanted Knight"を曖昧さの一例として再度詳細に分析し、同時にnationおよびアイデンティティをうたったと理解しうる、Muirの他の詩作品を並行して分析することによって、Muirがスコットランドの先人文人たちと同じモチーフを使いながら、伝承バラッドを模倣したロマン派詩人Keatsの"La Belle Dame sans Merci"のさらなる模倣という入り組んだ模倣の手法をとった理由は何か、ふたつのバラッド詩の相違点類似点はどこにあるのか、および彼自身が抱えるナショナル・アイデンティティ観と'Half-a-Scot'と述べた曖昧な帰属意識について論述した。 3. 研究の意義:従来スコットランドには独立王国時代からの歴史的、政治的、文化言語的独自性を確立する傾向が存在したが、2014年のスコットランド独立を問う国民投票、2015年のイギリス全土の政治傾向の鍵を握るスコットランド独立党の趨勢などによって、ナショナル・アイデンティティへの関心はこれまでになく高まっている。そのような転換期にあって、スコットランドを代表する詩人のナショナル・アイデンティティの曖昧さを検証することは、文化文学におけるアイデンティティ表象の多層性に注意を喚起することに貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成26年度の研究成果は本来であれば平成25年度に完了していたいものであったが、最初の年度の進捗が遅れたため、今年度Muirに関する研究を引き続き優先して行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでに科研課題採択によって展開できたバラッド詩の一連の研究に、今回課題によるEdwin Muirのバラッド的視点まで含めて、博士論文の中心部分を完成させる予定である。本年度に研究を予定していた George Mackay Brownのバラッド的視点、および両者の共通点としてのモダニズム指向については、論文中のMuirとバラッドに関する章のひとつのセクションとして重要であり、また、MuirとBrownのモダニズム指向については、論文全体の結論部分となる予定であり、そのような方向性を持って、かつ研究の展開をスピードアップして、MuirとBrownの研究のまとめを目指す。
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