2015 Fiscal Year Annual Research Report
アイデンティティ探求を超えてモダニズムへ--ミュアとブラウンのバラッド的視点--
Project/Area Number |
25370330
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
中島 久代 九州共立大学, 経済学部, 教授 (90227778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 英米文学 / スコットランド詩 / バラッド / Edwin Muir / George Mackay Brown / ナショナル・アイデンティティ / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 平成27年度の研究計画:本課題による研究成果を含めて博士論文 "Scottish Balladry and National Identity" の完成を本年度の計画では目指した。
2. 研究成果の具体的内容: "Scottish Balladry and National Identity" の目的を (1) バラッド詩の系譜中の19世紀から20世紀にかけてのスコットランドのバラッド詩作品の詳細な検証を行うこと、(2)スコットランドのバラッド詩にナショナル・アイデンティティの観点からアプローチすることの2点に置き、Muirについては「想像される共同体としての表象」である「うたびとトマス」の模倣詩の変質の原因として、ドイツ詩人ハイネからミュアが受けた影響にも言及して昨年度の内容を発展させ、スコットランドに対する根本的懐疑と帰属意識の揺らぎをさらに明確にした。Brownの代表的なバラッド詩は、オークニーの伝承を題材としていること、スコットランドへの根本的懐疑の姿勢が反資本主義の形をとって現代社会への警鐘として彼のバラッド詩の随所に言及されていること、などが理解できた。オークニー出身の2人の現代詩人のバラッド詩に見られる現代批判と反帰属意識は、現代スコットランド文学が示すモダニズム的傾向に連なるものであり、20世紀のスコットランドのバラッド詩はアイデンティティ表象の役割を超えたモダニズムへ向かったことを示していると言える。Brownの役割を含めたモダニズム論はNational Identity論の発展として示すべきと考え、博士論文とは別途に発表予定である。
3. 研究の意義:日本におけるバラッド詩の先行研究は18世紀について一定の成果が示されているが、論文"Scottish Balladry and National Identity"によって、19世紀の一定の成果を示した。
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