2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370336
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
MEVEL YANN 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90431486)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サミュエル・ベケット / フランス文学 / フランス演劇 / 学祭的研究 / セミナー / 出版 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の我々の研究活動においてまず挙げられるのは、毎年東北大学東京分室において開催している「ベケット・セミナー」である。本年度は「サミュエル・ベケットとフランス文化」のテーマで2015年1月10日、日本国内のベケット研究者の多数の参加を得、また国外の2名の研究者による研究発表が行われた。一人目のトマス・ハンケラー氏(スイス、フリブール大学副学長)は、サミュエル・ベケットとフランス詩の関係性を分析した。二人目のステファニー・スマジャ氏(パリ第7大学、准教授)は、ベケット作品の文体論的分析を行った。両者のアプローチは、共にこれまで十分な寄与がなされてこなかった分野であり、非常に興味深いものであった。会場からは各参加者の視点から緻密な意見が提出され、活発な議論が交わされ、セミナーは一定の成果を得ることができた。 また、これまで開催してきたセミナーの成果を出版物としてまとめる準備を進めている。3月にはパリに出張し、現地のベケット研究者と打ち合わせを行い、進捗状況の確認をすることができた。すでにミナール/ガルニエ社からの出版が内諾しており、あとは編集作業を進めるのみである。 それから同出張において、ロンドンのリーディング大学院にて、国際ベケット財団が保管する貴重な資料を調査することができた。ここでは主にベケットの伝記的な資料を調査することができ、本研究プロジェクトを進める重要な資料を調査することができた。この成果は、フランス本国の文学研究論文投稿雑誌Romanに発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、我々が毎年開催している「ベケット・セミナー」においては、これまで多様性に富んだ多くの研究発表がなされてきており、またそれぞれが当該分野において重要な研究意義をもつものである。2014年度に行われたセミナーでのハンケラー氏とスマジャ氏の発表もまた、これまでの研究発表と比較しても新鮮かつ緻密な考察が展開されていたことも特筆に価するであろう。 また、セミナーの成果を出版物としてまとめる構想に関しては、寄与を呼びかけた研究者からの論文原稿はすでにすべて集まっており、残るはこれらの編集作業のみとなっている。このまま編集作業を進めていけば、これらの成果を本年度中にはミナール/ガルニエ社に提出することができるであろう。 以上のことは、本研究プロジェクトの目的である、日本におけるベケット研究の発展を促すものであり、過去20年間のベケット研究を総括するというプロジェクトの主旨は十分に果たされているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度も「ベケット・セミナー」を開催する予定であるが、本年度はこれまでの研究発表中心の形態とは異なるものを構想している。具体的には、ベケット演劇作品を中心に上演を行い演劇界で実際に活躍している人物をセミナーに招き、創作者と研究者間で議論を行うような場を構想している。演劇作品を演出・上演するという観点で議論を行うことで、フランスがこれまでベケット作品全体に向けてきた解釈を日本国内の研究者とともに明るみに出すことができるであろう。 このセミナーの成果の出版を完了するために、本年度は2種類の作業が予想される。ひとつは、各論文に含まれている引用文の引用先の精査といった校閲作業である。もうひとつは、すべての寄与論文を総合するような原稿と本書全体への導入的役割を果たす原稿の準備である。また、これらとは別に、各論文の内容を批評する原稿も準備する必要があるであろう。 また、国際ベケット財団が保管する資料の調査成果を研究雑誌Romanに研究論文として発表するため、その原稿を準備することになる。この論文は、これまで注目されてこなかったベケットに関する伝記的な資料の重要性を示すとともに、日本国内では調査することが難しい資料の貴重な情報へのアクセスを提供するものである。
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