2013 Fiscal Year Research-status Report
ブラジルの文化における喜劇性――ユーモア・笑い・遊戯性――
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25370342
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
武田 千香 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20345317)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブラジル文学 / ブラジル文化 / 笑い / ユーモア / ポルトガル文化 / ラテンアメリカ |
Research Abstract |
計画どおり、江口佳子、渡辺一史、宮入亮、花田勝暁の4名を研究協力者とし、以下のとおり実施した ① 19世紀~20世紀初頭のブラジルの演劇・文学における喜劇性の研究:マシャード・ジ・アシス研究については、研究代表者の武田千香が、傑作のひとつ『ドン・カズムッホ』の多義性について「記憶」の観点から研究する同時に、作品の翻訳出版を行なった。マルチンス・ペーナについては、約20編の喜劇を検討し、単にブラジル喜劇の創始者であるのみならず、「ブラジル文学」や「ブラジル文化」の創出にあたってきわめて重要な役割を果たしたことを確認した。 ② 研究協力者と全3回にわたる研究会を実施し、第1回ではマルチンス・ペーナの演劇とブラジル文化のかかわりについて(12月7日)、第2回(2月22日)および第3回(3月29日)では、20世紀後半のブラジルを代表する文化人シコ・ブアルキによる、軍政期に執筆した戯曲および歌(詞)を取り上げ、軍政期のブラックユーモアについて考察した。 ③ 文化的・社会的事象におけるユーモア・笑い・遊戯性の検証:3回にわたって公開研究会を実施した。第1回と第2回は、それぞれ日本人のサンバのダンサーと打楽器奏者、カポエイラ研究および実践者を招き、日本人である彼らの習得および実践体験からブラジル文化の特徴を探り、いずれにおいてもブラジルの独特のリズムが注目された〔第1回、講師:工藤めぐみ氏、宮澤摩周氏、6月17日 ;第2回 脇さやか氏、10月28日〕第3回は、長年ブラジルを撮り続けている映像作家を講師として招き、ブラジルの規範や制度に対する姿勢について考察した〔第3回 岡村淳氏、11月11日〕 ④ 海外調査および資料収集:渡辺一史がポルトガルのリスボンにおいて、ポルトガル文化・文学における笑いについて資料および情報収集を行なった(3月15日-22日)。今後、それを用いて研究を深めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な達成状況は以下のとおりである。 【文学・演劇】当初、計画していたマシャード・ジ・アシス研究およびマルチンス・ペーナ研究は実施できた。 【事象検証】公開研究会は、当初の計画より1回上回る3度開催し、研究会もじゅうぶんに計画通り実施できた。 【海外調査】研究協力者の海外における資料および情報収集は計画通り実施した。だが、唯一計画通り実施できなかったのが、研究代表者による海外での調査および情報・文献収集で、本務校での所用により断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に、研究代表者を中心に、江口佳子、渡辺一史、宮入亮、花田勝暁の4名より研究協力者としての協力を得て推進する。やはり柱は2本で、ひとつは、①19世紀から20世紀にかけての、ブラジルの演劇と文学における喜劇性の研究であり[文学・演劇]、もうひとつは②他の文化的・社会的事象において、ユーモア・笑い・遊戯性がどのように表われているかを具体的に明らかにする事象検証である[事象検証]。 【文学・演劇】ブラジルの喜劇ばかりでなく、おそらくはブラジル文化の形成においても重要な役割を果たした劇作家アルトゥール・アゼヴェード(Artur Azevedo)の演劇に注目して、ブラジルの演劇に関する研究の対象をブラジルの19世紀後半まで広げる。それと並行して、引き続きモデルニズム文学および軍政期の文学・演劇におけるユーモア・笑い・諷刺に関する研究を、研究協力者の協力を得て推進する。モデルニズモ文学は、ブラジルの文化および文学における喜劇性の重要性が決定的となった時期である。モデルニズモ文学で掲げられた理想や理念について、当時発表された数々の諸宣言を通して研究していくことを計画している。またユーモア・笑い・遊戯性を切り口としたブラジルの文学・文化とポルトガル文学・文化の関わりについても、引き続き研究を推進する。 【事象検証】引き続き音楽やカポエイラ等のリズムに焦点を当て、研究会やシンポジウムの実施を通して、実践者との意見交換を行なっていく。 海外における研究調査活動は、研究代表者のほか研究協力者1名が資料収集および研究調査を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の武田千香は、当初、夏季にブラジルへ調査および情報・文献収集のための出張を計画していたが、本務校で生じた所用のため渡航することができなくなった。計画していた使用額との差額はそのためである。 平成25年度の出張で計画していた事項を、26年度の出張に組み込むと同時に、初年度の残額を使って、当初の計画にはなかったシンポジウムの実施等を開催することを考えている。
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Research Products
(4 results)