2016 Fiscal Year Research-status Report
1800年前後のドイツ文学における「ドッペルゲンガー」形象の生成をめぐる考察
Project/Area Number |
25370354
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
亀井 一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00242793)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ドッペルゲンガー / ジャン・パウル / ハインリヒ・フォン・クライスト / 動物磁気 / E・T・Aホフマン |
Outline of Annual Research Achievements |
クライストの戯曲『アンフィトリオン』を分析して、以下のことを明らかにした。 1. モリエールの戯曲から引き継いだゾジアス=メルクール劇と、クライストが大幅に書き換えたユピター、アンフィトリオン、アルクメーネの劇(II. 5, III, 11)の間には、ドッペルゲンガー=モチーフについても質的な差異が認められる。 2. ドッペルゲンガー=モチーフは、内省に関連づけられて、1800年前後の文学において一定の意味をもつようになった。『アンフィトリオン』は、相互的な関係から再帰的な内観への移行を示しているという点で、ジャン・パウルからE・T・Aホフマンへのモチーフの展開の中間点に位置づけることができる。 3. 27年度研究で採用した「ドッペルゲンガーが誰に現れるのか」という観点は、語り手のない戯曲形式の作品分析にも有効である。 また、27年度研究に引き続いて人間学分野の調査も進めた。特に、ジャン・パウルの『有機的磁気のいくつかの奇跡についての推測』で提示される「エーテル身体」のイメージについては口頭発表した。「エーテル身体」は、地上の身体と精神を媒介する仮説的な器官で、死後の魂の身体になるとされる。動物磁気の諸現象はその存在を裏付けると、ジャン・パウルは主張する。発表では、同時代の敬虔主義、人間学との関連、また、ジャン・パウルの作品との関連を示した。 さらに、成果の一部を大阪教育大学のオープンキャンパス研究紹介コーナーでパネル展示した(『ドイツ恋愛小説における問題の<三人目>』)。ポスターは、大学HPでも公開されている(www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kenkyo/kenkyuseika/pdf/H28_1/17.pdf)。経過報告サイト(www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kamei/doppelgaenger.html)も更新した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文という形での成果発表が進んでいないが、原稿作成中(『アンフィトリオン』論)、あるいは、口頭発表済み(エーテル身体論)という状態で、準備はできている。最終的には遅れをとりもどすことができる。 28年度研究計画に組み込まれていたクリンガー『双子』については、まだ調査段階である。クライスト『アンフィトリオン』に、ジャン・パウル以前の二人組形象が含まれているので、合わせて考察を進めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って、ドッペルゲンガーと同時代の社会の関係について考察する。またこの関連で、当初計画に書き込んだ作者とテクストとの関係について、これまでの研究成果をふまえ、検証したい。 最終年度なので、研究発表を積極的に進める。クライスト『アンフィトリオン』とエーテル身体をめぐる研究は、研究論文として発表する。これらの論文は、前年度の研究成果とともに、これまでの研究成果全体を概観できるような形にまとめる。
|
Causes of Carryover |
洋書の支払いなどにより、若干の残金が出た。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度なので、価格変動が予想される洋書発注は年度前半に済ませる。
|
Research Products
(3 results)