2013 Fiscal Year Research-status Report
サンドとスタール夫人における音楽と旅:性と国境を越える試みに関する研究
Project/Area Number |
25370355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 千代 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80170611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サンド / スタール夫人 / ロマン主義 / 音楽 / 旅 |
Research Abstract |
ロマン主義運動とそれを取り巻く精神風土は19世紀ヨーロッパにおける音楽や旅行の大衆化の要因の1つであると言えよう。ロマン主義の先駆者スタール夫人とジョルジュ・サンドの作品・書簡中の「国境を越えること」「自分の性を越えること」に関するトピックについて、内容、文体、間テキスト性、文学史上の位置づや影響関係などを検討することにより、音楽と旅による国家とジェンダーの越境のテーマとその射程を明らかにするのが本研究の目的である。 平成25年度は、平成24年度までに行なったサンドと音楽家に関する研究を継続し、さらに小説『歌姫コンシュエロ』『ルードルシュタット伯爵夫人』などを中心に、旅のもたらすイマジネーションの活性化を音楽家たちの営みや音楽と結び付けて考察した。さらに、近代ヨーロッパにおける芸術家の越境と理想社会の建設というテーマがサンドの著作中でどのように扱われており、いかなるメッセージを発信したのかを検討した。 一方、スタール夫人は、ナポレオンによるフランスからの追放とヨーロッパ各地での亡命生活の中で小説『コリンヌ』や評論『ドイツ論』を出版して当時のオピニオン・リーダーとなったわけであるが、今年度はこの2つの作品(特に『コリンヌ』)を取り上げ、異文化接触という観点から、「国籍」「国民性」「混血」などについて考察し、EUが成立している現在のヨーロッパ人(および現代日本人)のそれらに対する考え方と18世紀末・19世紀初頭の西ヨーロッパの人々の考え方や見方とがいかに違うのかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンドに関しては、平成24年度までの研究の継続という形で、加藤由紀氏との共著『ジョルジュ・サンドと四人の音楽家 リスト、ベルリオーズ、マイヤベーア、ショパン』を刊行した。また、日本ジョルジュ・サンド学会で研究発表(「ジョルジュ・サンドと音楽家」)を行なった。スタール夫人に関しては、研究成果を論文「スタール夫人の『コリンヌあるいはイタリアを二十一世紀に読む」として執筆し、平成26年5月に刊行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
協力研究者マルティーヌ・リード氏(フランス・リール第3大学教授、2014年5月に招聘予定)および高岡尚子氏(奈良女子大学准教授)と緊密な連絡をとって研究協力を行なう。サンドおよびスタール夫人の作品中の音楽と旅に焦点をあてて、この2人の女性作家の性の揺らぎ、「性を越える」方法、その様相などについて詳しい考察を行なう。また、サンドの作品(『歌姫コンシュエロ』『ルードルシュタット伯爵夫人』等)と音楽に関する研究をさらに深める。成果については海外もしくは国内の学会などで研究発表を行なう。
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