2014 Fiscal Year Research-status Report
老いる女性たち(へ)の視線:フランス女性作家とその作品を通じて
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25370358
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高岡 尚子 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 教授 (30403314)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、文学における「老い」の表象を探ることにある。「老い」は正面から取り組むのに心楽しい問題ではない。加えて、とりわけ女性においては、「若さ」に過剰な価値が置かれ、「老い」は凋落とみなされがちだ。それでも長命を授かり、「老いた女」として書き続けた女性作家たちは、自らの「老い」をどのように感じていたのか。19世紀以降のフランスには、サンドやボーヴォワールなど、老年を迎えてなお健筆をふるった女性作家が多くいる。彼女たちが書き残した、「女性が老いること」への証言に耳を傾けることは、私たちが否応なく直面する「老い」へのまなざしを鍛え、「これからの時代の老い」の可能性を開くきっかけとなるに違いない。こうした考察を深めるために、本研究は、次の三方向からのアプローチにより、成果を得る予定で開始した。 ①女性が老いることについて、男性作家がどのようなまなざしを向けてきたかについて、主に、19~20世紀のフランス小説を中心に検討する。 ②19世紀から20世紀にかけてのフランス女性作家たちが、作中人物にどのように「老い」を語らせているかを検討する。これまでほとんど参照されてこなかった作家たちの作品も掘り起こし、光を当てる。 ③19世紀から20世紀、さらには現代のフランス女性作家たちが、自らの「老い」をどのように語っているかを検討する。その際、フランス以外の国で活躍する現役作家や、研究者らとの「老い」に関する対話や討論の場を設定したい。 当初計画では、2年目は上記した②③を繋げながら、共同研究の場を作ることを目的の第一としてあげており、予定通りに遂行した。また、「老い」の問題を考える上では、日本の女性作家への眼差しが不可欠であることが判明したため、図書等の文献収集にも力を注いだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、「作中人物」の延長として作家たちの母親に注目し、彼女たちが母の死をどのように描いたか、という新しい視点を開拓した。このことにより、作家自身の「老い」への意識をさらに鮮明にとらえることができるようになった。同時に、女から女へという世代間の受け渡しと「老い」という問題項にも光を当てることができるようになった。このことは、今後、研究者間の対話を進めるうえでも重要なポイントとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の欄に記述したとおり、作家と死の問題への関心を開いたことは、本研究の展開に重要な成果となった。この点をさらに掘り下げながら、さらに、「老い」と「生命」全般への作家たちの意識と時代性を追求していきたい。この問題を深め、成果としてまとめるために、国際学会への参加・発表を行うことはもちろん、本年度に交流を始めた研究者らとの対話を継続していく。
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