2014 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦後の仏語版国際文芸誌──「新フランス評論」誌との関係を中心に──
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25370360
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉井 亮雄 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40200927)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仏文学 / 新フランス評論 / 文学史 / 文芸誌 / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画どおり、今年度(3年計画の2年目)の研究作業は、初年度につづき,第一次世界大戦後に創刊された仏後版「国際文芸誌」の全体的な状況把握、および当該各誌と「新フランス評論」誌との交流について具体的な実態調査をおこなうための基礎資料の参照・収集が中心となった。 実際の作業は主として次のふたつ。第一は、研究主題の背景として大戦勃発までのフランスの文芸誌数誌(初期「新フランス評論」や「誌と散文」「ラ・ファランジュ」など)の活動を俯瞰した。とりわけ「ラ・ファランジュ」については詳細綿密な総合索引をフランスで出版したが、同書はすでに斯界において好評を博している。また、新たにアドリアン・ミトゥアール主宰の「ロクシダン」(1901-1914年、全140号)を通覧し、同誌の編集傾向を分析するとともに、その総合索引の作成作業を継続中である。第二は、大戦後に復刊・復活した「新フランス評論」やポール・デジャルダン主宰「ポンティニー旬日懇話会」の活動を概観し、また当時の国際文芸誌のひとつ「ル・モンド・ヌーヴォー」の活動にかんし基礎資料の参照・収集を初年度に引きつづき継続した。 以上の作業から得られた今年度の主要な成果としては、第一に、大戦前の文芸誌編集の実態をある程度具体的かつ包括的に把握できたこと、第二に、戦後復刊・創刊された文芸誌の多くが敗戦国ドイツにたいする姿勢を明確にせざるをえなかった経緯や、当該各誌の運営上の困難・制約も主としてそこに由来した点を実証的次元においていっそう具体的に確認できたこと、である。 また未刊行の文献や資料の閲覧・筆写のために、初年度同様,フランスでの現地調査をおこない(主要な訪問機関はパリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫とフランス国立図書館の2カ所)、関連雑誌間の交流の具体相をかなり正確なかたちで把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な研究成果として、先行の科研費研究で対象とした「ラ・ファランジュ」誌の総合索引をフランス(国際アンドレ・ジッド学会出版)で公刊し、すでに専門研究誌数誌の書評において好意的な評価を受けた。また「ロクシダン」誌についても初年度に引きつづき同様の作業を継続しており、今世紀初頭から第一次世界大戦勃発までのフランスで大きな位置を占めた文芸誌にかんし、基礎的資料の作成に実績を示した。本科研費研究主題にかんしては、戦中・戦後のフランスの文学環境への理解を深め、戦後創刊の仏語版国際文芸誌のひとつ「ル・モンド・ヌーヴォー」の具体的な調査・分析を継続的におこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引きつづき、研究対象を「ル・モンド・ヌーヴォー」誌以外の仏語版国際文芸誌にも広げ、当該各誌と復刊後の「新フランス評論」との関係の多様性について実証的に考究する。そのためにフランスでの現地調査(我が国では入手難の定期刊行物や関連未刊資料の閲覧など)をさらに進めながら、課題について実質的な総括を目指す。
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Causes of Carryover |
フランスでの現地調査によって、第一次世界大戦後に創刊された仏語版国際文芸誌「ル・モンド・ヌーヴォー」や他の定期刊行物の閲読を継続中であるが、同時代の文学環境の正確な把握をめざして調査対象を他の雑誌にも広げつつあるため、作業には予想以上の時間を要することとなった。これらの物理的な問題に適切に対処すべく、次年度(最終年度)も今年度と同様、比較的長期の現地調査をおこなうことを念頭に、今年度配分額の一部を未使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由のとおり、研究課題に直接関係する文芸誌の閲読作業を効率的に遂行するため、次年度(最終年度)においても、第2年度と同様、フランスで比較的長期の現地調査をおこなう。
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Research Products
(5 results)