2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25370361
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
竹岡 健一 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (30216874)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブッククラブ / ドイツ文学 / 書籍研究 / 書籍販売 / 出版 / 読書 / 大衆教育 / 文学仲介 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ブッククラブという特殊な書籍販売形式がドイツにおいてどのように発展し、いかなる社会的役割を果たしたのかを明らかにし、わが国におけるブッククラブ研究の基盤を確立することにある。平成27年度には、当初の計画に基づいて、「現代的ブッククラブ」に関する事例研究と研究成果の総括を中心に研究を進め、次のような成果を得た。 (1) 1945年以後のドイツにおける最大のブッククラブである「ベルテルスマン読書愛好会」に関する事例研究を行い、「現代的ブッククラブ」の2つの主要特徴を明らかにした。①一般の書籍販売と協力して活動する「二段階販売システム」は、書籍販売との緊張の緩和、宣伝力の増大、利益の向上を図った点で、ブッククラブの歴史において革新的な優れた販売方法であった。②1970年代以降、販売方法と販売品目の両面で進められた「経営の多角化」は、レコードと音響機器を中心とする提供品目の拡大を通じて、ブッククラブを総合的な「余暇産業」へと発展させた。 (2) 以上で当初の計画は概ね実施されたが、さらに、ブッククラブの活動を中世以後のドイツにおける書籍販売と読書の発展全体の中で考察することを試みた。その結果、ブッククラブの隆昌が、宗教改革期、第一次読書革命期、第二次読書革命期に次ぐ、第四の飛躍の段階とみなされることを明らかにした。 (3) 以上の後、三年間の研究成果を総括し、ブッククラブの最大の社会的役割は、本を買って読む習慣が社会の広い層に普及する「読書の民主化」への貢献にあり、この点で伝統的な書籍販売に対する重要かつ有効な対案をなしたとの結論が得られた。 以上の研究成果は、ブッククラブ研究において先駆的な意義を有する。これらのうち、(2)について、ドイツ語学文学国際学会(上海)で口頭発表を行い、反響を得た。また、(1)の①と②、および(2)について、学会誌等に印刷発表を行った。
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