2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏における神話・伝説素材の作品化に見られる集合的記憶の諸相
Project/Area Number |
25370363
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
園田 みどり 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80246363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 裕一 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (10229130)
ループレヒター ヴァルター 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50254123)
山本 潤 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50613098)
犬飼 彩乃 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (70622455)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 独文学・独語圏文学 / 記憶 / 伝説 |
Outline of Annual Research Achievements |
ループレヒターは、神話的語り口を歴史的な語り口と融合させ、新しい表現形式へと発展させたオーストリアの作家コンラート・バイヤーの研究を行った。ウィーン文学館、資料館、オーストリア国立図書館訪問による資料収集・分析を通じて準備したシンポジウム『コンラート・バイヤー:テクスト・図像・音声』(9月20日)で『コンラート・バイヤーにおける表現原則としての偶然性』の題で講演を行い、現地の研究者と意見交換した。 バイヤーの例えば小説モンタージュ『ヴィトゥス・ベーリングの頭』は、ロシア帝国の航海士ベーリングが、ロシア‐アメリカ間の航路を発見したという歴史的業績だけでなく、極限の体験やそれに伴う極端な思考形式が神話と深く結び付く様子をあわせて表現した。この点において、本作品は神話・伝説素材と歴史というそれぞれの集合的記憶が融合し作品化された一例として捉えることができる。 山本は、『ニーベルンゲンの歌』および『哀歌』に関するこれまでの研究を整理し、平成26年度日本学術振興会研究成果公開促進費により単著として出版した。また、『ニーベルンゲンの歌』の近代以降の受容史研究の成果を、論考「破滅の神話―近代以降の『ニーベルンゲンの歌』受容とドイツ史」にまとめ、西山(編)『カタストロフィと人文学』に掲載した。 一方、戦争という新しい集合的記憶の克服を行おうと試みた前衛作家アルノ・シュミットの調査を犬飼が行った。シュミットが作品執筆の際に神話・伝説素材を投影・描出した風景を撮影・記録した様子を整理・展示した特別展『風景写真家としての作家アルノ・シュミット』、戦時中の記憶と伝説素材を織り交ぜて作品とした短篇『ポカホンタスのいる湖景』の初演劇化作品初演、作家研究全体の足がかりとなる『アルノ・シュミット生誕100周年記念展』オープニングイベントなどを訪問し、資料収集および各研究者との意見交換などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規テキストの読解および解釈に予定していたよりも時間がかかっており、一定の公開しうる成果が出るまでにはもう少々の時間を要する。本プロジェクトの主要メンバー二人が、専門とする作家ないしは領域においてテーマに関連する資料や媒体を求めて行った研究旅行によって各自の成果が得られたことが何よりも大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究対象の絞り込みを行い、その解釈に集中する。そして、引き続きテクスト研究を行う。
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Causes of Carryover |
研究に必要な文献は大方揃えられた。しかし、今後研究の進捗状況に応じてさらなる文献等の購入の必要性が生じるかもしれないこと、また、それらを分類・整理するための人件費等も必要になることが予想されるなどの理由から、残額を持ち越すこととした。また、平成27年度にドイツから研究者を招聘してのコロキウムの開催を計画しており、その招聘および謝礼金のために平成26年度分の分担金を持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍・資料購入、資料整理、印刷費の補填などに充てる予定。また、上述の通り、開催予定のコロキウムの講師謝礼などに使用する予定。
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