2015 Fiscal Year Research-status Report
晩期ディドロ思想の統一的解釈のために―『生理学要綱』の間テクスト的読解―
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25370364
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (90188681)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ディドロ / 『生理学要綱』 / 間テクスト性 / ハラー / 『セネカ論』 / 『両インド史』 / モンペリエ学派 / 唯物論 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画では以下のとおり。1)ディドロの『両インド史』への寄稿、『セネカ論』執筆、それらのテクスト断片を活用した政治経済道徳論集といった晩年著作群を、ecriture fragmentaireの視角から読解し、『要綱』を晩年思想全体のうちに間テクスト的に位置づける。2)ハラーの研究書を読み込み、Hallers Netzを視野に収めつつ、27年度に『原論』3巻分(Ⅵ巻、Ⅶ巻、Ⅷ巻)を読解し、『要綱』ドルヴァル写本と『原論』との関係を最後まで解明する。モンペリエ学派やエジンバラ学派との関係についても研究を進める。ハラーの『原論』について全体像を示すような論文(4分冊)を準備し、とりあえず『原論』のⅠ、Ⅱ巻を扱った第一分冊を紀要に発表する。 1)については、ロッテルダムの国際18世紀学会で、同時代に風土や衛生環境への関心が増大する中で、晩期ディドロが『生理学要綱』でなぜそうした問題を扱わなかったを、仮説的に論じた。ただ、まだその研究の射程は時代のコンテクストに十分及んでいない。ディドロの政治道徳思想を含む晩年思想の研究も、テクスト上の制約もあって、十分に進んでいない。2)については、私自身の研究によって、ディドロが実はハラー『生理学原論』をあまり参照していないことがわかったので、むしろハラー以外のコンテクスト―モンペリエ学派やエジンバラ学派、マラーなど―との関係で、典拠関係の考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学や学会での役職など、研究と直接関わらない職務に割く時間が増えたことも一因である。 それ以外に、1)2013年がディドロ生誕300年ということで、多くの新規の研究成果が続々と出版されつつあり、それをフォローするのに時間をとられていること、2)晩期ディドロの著作について、『ディドロ全集』での校訂が遅れており、レーナル『両インド史』校訂版も東インド篇公刊後、出版が中断し、『生理学要綱』と『セネカ論』以外の晩年著作の全貌が見透しにくいままであること、3)晩期思想を正確に認識するためには、初期や中期のディドロ思想もきちんと踏まえる必要があるが、その解釈の往復運動に時間をとられていること、などが主たる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究以外の職務は増え続けており、他方で読むべき著作や研究書は増えていくので、画期的な研究推進策はない。同時代のコンテクストを押さえた上でテクストを解釈する研究方法自体も、遅滞を生みやすくしている。 遅滞を解消するために、昨年も述べたように、1.コンピュータやインターネットなどを最大限活用して、ディドロのテクストを巡る膨大なコンテクストを概括すること、2.膨大なコーパスから典拠や影響などを示す字句を見つけ出し、それらに精読を施す一方で、コンテクストについても、捨象はせず、文脈として把捉すべく速読していく、3.両読解法をメリハリを付けて行い、それらをコンピュータを使って綜合し、研究速度を高める、といった方策を工夫しつつある。 また、今年度は後期に半年間「サバティカル研修」を許可され、フランスのナント大学で、ディドロ研究者として著名な友人ゲラール・シュテンガー氏と共同研究を進めることができるので、それを活用して、『生理学要綱』の典拠研究を中心に、晩期ディドロの思想研究に集中的に取り組み、遅れを取り戻したいと考えている。
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Research Products
(5 results)