2015 Fiscal Year Research-status Report
ワルシャワ・ゲットーにおけるイツハク・カツェネルソンのイディッシュ語文学の研究
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25370365
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細見 和之 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (90238759)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カツェネルソン / ワルシャワ・ゲットー / イディッシュ文学 / 『バビロンの流れのほとりで』 / 『ヨブ』 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書いた最大の戯曲『バビロンの流れのほとりで』のイディッシュ語からの翻訳をさらに見直し、その第2幕の訳を神戸・ユダヤ文化研究会の機関誌『ナマール』第20号に発表した。 また、8月31日から9月3日にかけてワルシャワに滞在し、ワルシャワのユダヤ史研究所でカツェネルソンに関する資料収集にあたるとともに、トレブリンカ絶滅収容所跡を訪問した。とくにユダヤ史研究所でカツェネルソンの妹が1948年にブエノスアイレスでイディッシュ語で発表していた『イツハク・カツェネルソン その人物と作品』を掘り起こすことができたのは、大きな収穫だった。さらに、9月3日から6日にかけてベルリンに滞在し、ホロコースト記念館等で、あらためてドイツの視点からワルシャワ・ゲットーを捉えるための調査と資料収集にあたった。 さらに、カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで『バビロンの流れのほとりで』の後に書き上げた重要な戯曲『ヨブ』について考察し、その成果を論文として大阪府立大学の紀要『人間科学』第11号に発表した。 また、平成27年度をつうじて、ポーランド語、ヘブライ語の学習に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書いたイディッシュ語作品については、その全体像をほぼ掴むことができた。ゲットー期の前半においては戯曲に力点が置かれ、後半には詩が焦点化されてゆくその姿から、ゲットーという状況下での彼の文学的営みの意味を、私たちは照らし出すことができる。難渋しているところは、ヘブライ語とポーランド語の学習がなかなか本格的に研究に活かせるところまで進展しにくい点である。これについては引き続き努力する以外にない。ただし、27年度の調査成果としてカツェネルソンの実妹が書いた伝記が入手できたので、これをじっくり読み込みながら、これまでの研究成果を次年度には書物としてまとめる目途が立つように努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで発表してきたカツェネルソン論に、さらにカツェンルソンの実妹の書いていた伝記の情報を加味することによって、ワルシャワ・ゲットーにおけるカツェネルソンの文学活動について1冊の研究書にまとめるよう努力する。また、それと並行して『バビロンの流れのほとりで』を翻訳出版できるように試みる。その過程では、ヘブライ語、ポーランド語の学習を継続するとともに、あらためてワルシャワのユダヤ史研究所、もしくはイスラエル、ハイファ郊外の「ゲットー戦士の家」キブツを訪問して、最終的な調査にあたることとする(これについては、その時点でのイスラエルおよびその周辺の政情も見ながら考えることになる)。
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Causes of Carryover |
537円の残額となったが、この金額で購入すべき物品や消耗品などがとくになかったため、次年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
あらためて次年度において、書籍購入、消耗品購入などの費用にあてることとする。
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Research Products
(1 results)