2014 Fiscal Year Research-status Report
語り得ぬものの言語論 ― 18世紀ドイツ語圏における「沈黙」の系譜
Project/Area Number |
25370369
|
Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
宮谷 尚実 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (40386503)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 沈黙 / 言語論 / ハーマン / プロティノス / キルケゴール / ヘルダー / 言語思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、言語論の中には位置づけられ難い、「沈黙」や「中間休止」に着目し、古典修辞学から現代における言語論の系譜のなかで「中間休止」がいかなる意味を持ち、それがどのように解釈されてきたかを跡付ける試みである。当該年度の研究計画は、特に古典修辞学から現代に至る「沈黙」の系譜をたどることだった。 本年度の研究は、日本独文学会の国際誌 "Neue Beitraege zur Germanistik" Band 13 / Heft 1, Muenchen (iudicium) 2014 (査読あり)にドイツ語論文 "Schweigen als Ursprung der Sprache bei J. G. Hamann" (113-126ページ)として掲載された。本論文では、18世紀の思想家ハーマンにおける「沈黙」観の分析にとどまらず、ギリシャの哲学者プロティノスから、ハーマンおよびヘルダーを経て、いずれキルケゴールへ、あるいはさらに20世紀日本の作曲家武満徹における「沈黙」概念とつながりゆく「沈黙」の系譜を描き出している。この成果は、本研究費による文献調査および海外での専門家との意見交換によって可能となった。 本研究の意義は、これまでのハーマン研究でほとんど注目されていなかった「沈黙」の概念を通して、それを言語論の一部として論じた点である。また、それを広い歴史的文脈に文化比較的観点も取り入れながら位置づけた点も本研究の重要性である。 当該年度にはさらに次の段階へむけての準備作業も進んでいる。W. v. フンボルトにおける言語論における「沈黙」に関する調査もすでに実施している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際誌への研究成果の公表ができたため、本研究は計画通り実施されている。さらに今後の研究にむけて、W. v. フンボルトに関する調査が進んでいるため、計画以上に進展しているといえよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は予定通り、解釈学および翻訳学の文脈における「沈黙」の役割と意味を明らかにし、特に18 世紀ドイツ語圏の「沈黙」理解との影響関係やその後の「沈黙」との対峙や解釈の取り組みを明らかにする。その後の言語論の例として、W. v. フンボルトにおける「沈黙」の意義の調査を開始し、すでに進捗している。また、これまでの成果をさらに拡充すべく、神秘思想とハーマンらとの相違点を明らかにすることも試みる予定である。
|
Causes of Carryover |
当該年度の出張は期間が短かったため、宿泊費が予定よりもかからず、また書籍代確保のために日当を計上しなかった。しかし、予定していた書籍の購入が不要となったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の出張代および研究関連書籍購入費として使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)