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2013 Fiscal Year Research-status Report

19世紀フランスにおける文学的オリエンタリズム

Research Project

Project/Area Number 25370370
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionUniversity of the Sacred Heart

Principal Investigator

畑 浩一郎  聖心女子大学, 文学部, 講師 (20514574)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords仏文学 / 19世紀 / オリエンタリズム / 旅 / 植民地 / 他者 / 異郷
Research Abstract

本研究初年度に当たる平成25年はまず旅行記に焦点を絞り、実際にオリエントの地を踏んだ作家たちがいかにそこに作品創造のためのインスピレーションを汲んだかという問題を検討した。具体的には、19世紀にフランスならびにヨーロッパにおいて爆発的流行を見せるオリエント旅行記の嚆矢とも言えるシャトーブリアンの『パリからエルサレムへの旅程』(1811)を取り上げ、そこで作家がしばしば試みる「自分について語る」ということの意味とオリエントの関わりを分析した。
その際、二つの分析の軸を設定した。ひとつにはあえて旅行記文学の系譜から逸れ、フランス文学の伝統であるユマニスムの枠組みにこの作品を置き直すという試みである。そのことによりシャトーブリアンがこの作品を執筆する際に、ルソーの『告白』(1770)の反響ー好意的なものであれ、否定的なものであれーを強く意識していたということが突き止められた。
もうひとつは当研究にとっては前時代に当たる18世紀を代表する作家たちーヴォルテール、ディドロ、ビュフォン、ルソーーらが一様に旅行記を執筆していないという事実に着目したことである。これは18世紀には旅行記は「地位の低い」ジャンルと見なされていたということを示している。そのような潮流の中でシャトーブリアンは作家としての主観を強烈にこの言説に刻印する。そのことによって、旅行記はきわめて近代的でかつ普遍的な文学ジャンルとして確立したのである。
また後期ロマン主義の作家テオフィル・ゴーチエのオリエント体験についても、彼の残したさまざまな旅行記を手がかりに分析を行った。
10月に別府大学にて行われた日本フランス語フランス文学会において「旅と文学」というワークショップを開催し、コーディネーター兼発表者としてロマン主義時代を代表する作家たちと旅との関わりについてさまざまな角度から考察を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成25年度は主に旅行記におけるオリエントの表象の問題を考察することを予定していた。その意味では、19世紀のオリエント旅行記のモデルとなったシャトーブリアンの『パリからエルサレムへの旅程』を集中的に検討し、その位置づけを再確認することができたのは大きな成果である。この旅行記はまさに本研究において出発点に置かれるべき作品となるからである。
また後期ロマン派のテオフィル・ゴーチエについても、そのオリエント体験を彼の生涯を追う形でつぶさに考察することができた。彼の最初のオリエントとの出会いとなる画家プロスペル・マリヤの絵画『カイロのエズベキヤ広場』(1834)を見たときの印象の検討から始め、彼が行ったさまざまな旅行(スペイン、トルコ、エジプト)についての彼の紀行文の分析、またオリエントの地に自らの想像上の故郷を求めるというファンタズムについて、ゴーチエとラマルチーヌという二人の詩人の考えの軌跡を比較しながら追うという作業を行った。そのことにより、ゴーチエという作家にとってのオリエントという土地が持つ象徴的な意味を洗い出すことができた。
このように実際にオリエント旅行を行い、帰国後にその成果を直接旅行記という形で残した作家たちの分析についてはかなりの成果を収めることができた。しかしその一方で、オリエント旅行を行っても旅行記を残さず、その経験が間接的に別の形式の作品ーたとえば小説ーに結実する作家もいる。フロベールがその最大の例だが、こうした作家については踏み込んだ検討を行う時間がなかった。

Strategy for Future Research Activity

平成26年度以降は、これまでの研究で得られた旅行記についての知見を拡充しつつ、考察範囲を小説や詩作品へと広げていく。とりわけオリエントという土地にまつわるさまざまなステレオタイプなイメージが、実際に文学作品が生まれる現場ではどのように利用され、また換骨奪胎されていくのかを探っていく。
具体的にはまずヤン・ポトツキの『サラゴサ草稿』(1810)を取り上げる予定である。ポトツキは旅行者としてオリエントを広く旅しているが、その経験がこの複雑な構造を持つ小説作品にどのように影響しているのかを探っていく。またその他のロマン派の文学者たちの小説、詩作品とオリエントとの関わりについても可能な限り広く考察を深めていく。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

研究を遂行する上で必要となる資料(オリエンタリズム絵画に関するもの)の刊行が遅れたため、購入することができなかった。
繰り越した額を利用して、次年度に必要となる資料を購入する。

  • Research Products

    (2 results)

All Other

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] 「私は永遠に自分について語る」~シャトーブリアン『パリからエルサレムへの旅程』をめぐって~

    • Author(s)
      畑浩一郎
    • Organizer
      日本フランス語フランス文学会
    • Place of Presentation
      別府大学
  • [Presentation] フランス・ロマン主義文学と地中海~灼熱の光を求めて~

    • Author(s)
      畑浩一郎
    • Organizer
      地中海学会協力講座「地中海への誘い~伝統と革新の18、19世紀ヨーロッパ~」
    • Place of Presentation
      NHK文化センター青山教室

URL: 

Published: 2015-05-28  

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