2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370377
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
桑瀬 章二郎 立教大学, 文学部, 教授 (10340465)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ルソー / フランス思想・文学 / 啓蒙思想 |
Research Abstract |
研究初年度は、本研究に必要な研究書、批評校訂版、論文を収集し、それを徹底的に読み込む作業を行った。2012年のルソー生誕300年を機に膨大な数の研究書が次々と刊行されており、平成25年度にも多くの書物が出版されたが、最新の研究動向を正確に把握できたと確信している。さらにエコール・ノルマル図書館だけでなく、フランス国立図書館などで約4週間の研究調査を行い、日本では入手困難な文献をも閲覧・複写することができた。 フランス滞在期間には、研究課題に関連するシンポジウムが開催されていなかったため、研究報告こそできなかったものの、フランスのルソー研究者との有意義な意見交換ができた。 研究成果の公表については、当初の研究実施計画通り、スイスで刊行された研究誌(伝統あるEtudes Jean-Jacques Rousseau誌の新たな形態であるRousseau studies誌)に寄稿し、日本では岩波書店『思想』に、二本の論稿を発表することができた。 さらに、本研究課題にとって極めて重要な意味を持つシンポジウム(2014年3月15日開催:「来るべき一般意志:法、主体、フランス革命」)を立教大学にて組織し、日本の啓蒙思想研究の最先端を行く研究者と有意義な意見交換を行うことができた。言うまでもなく、そこで自らもルソーの政治哲学についての研究報告を行った。日本フランス語フランス文学会ワークショップでもルソーを中心とする啓蒙期の書簡についての研究報告を行い、研究成果の一部を公表することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に研究が進展している理由は明確である。平成25年度後期に研究休暇を得、本研究課題に集中的に取り組むことができたからである。 予定より長い期間フランスに滞在し、集中的に資料収集を行うことができたため、本研究を遂行するうえで不可欠となる、日本のいかなる研究機関にも所蔵されていない文献を多数閲覧・複写することができた。とりわけ使い慣れたエコール・ノルマル図書館での長期間の作業は極めて有益であり、日本で見落としていたいくつもの論稿・研究書をも発見することができた。 また、論稿執筆のためのまとまった時間も取れたため、当初の予定通り、1)海外学術誌に寄稿し、2)「政治における虚言」についての論稿を完成・発表できただけでなく、平成26年度の研究実施計画の一部である『ボーモンへの手紙』と『山からの手紙』という論争的弁明的著作についても集中的に研究を行い、論稿を完成し、岩波書店『思想』に公表することができた。 さらに、啓蒙期の政治思想についてのシンポジウムを開催することも可能になり、今後の研究の推進についてのヴィジョンがより明確になった。このように半年間の研究休暇という期間を十二分に利用できたと確信している。
|
Strategy for Future Research Activity |
11で詳述した理由により、当初の計画以上に研究が進展し、平成26年度の研究実施計画の一部を成していた論争的弁明的著作についても集中的に研究を行うことができたが、研究成果としてまとめる過程で、これが当初考えていたよりもはるかに複雑な問題であることが理解された。今後は平成26年度の研究実施計画の中心部分を成す、政治哲学についての考察を深めながら、上記の主題についてもより一層厳密な研究・考察を継続したい。 もうひとつ、初年度の研究実施計画であった、研究書、批評校訂版、関連論文の徹底的読解によって、政治哲学(理論的著作)、論争的弁明的著作、いわゆる教育哲学的著作、女性論関連著作の境界が、当初考えていたよりも、はるかに曖昧なものであること、つまり、ルソーの主要著作が特異な連関性、理論的統一性を備えていることが理解された。この点に留意しつつ、当初の研究実施計画を尊重しながらも、より総合的な視点から研究を推進していきたい。
|