2013 Fiscal Year Research-status Report
解釈学の転換:新約聖書解釈における新たな地平の探究と総合的な批評学援用の模索
Project/Area Number |
25370389
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
浅野 淳博 関西学院大学, 神学部, 教授 (20409139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 寿泰 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30352438)
辻 学 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50299046)
廣石 望 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (60339819)
中野 実 東京神学大学, 神学部, 教授 (70349786)
須藤 伊知郎 西南学院大学, 神学部, 教授 (80309864)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 新約聖書 / 解釈学 / 福音書 / 使徒言行録 / パウロ書簡 / 後期書簡 / 黙示録 |
Research Abstract |
2013年度の研究活動は夏と冬に開催された2回の研究会を軸にしており、古典文学解釈学の転換に資する以下の課題に関して、各研究者がそれぞれの専門分野の視点から研究を重ね、討議した。社会へ貢献する方策の1つとしてインターネットをとおしての成果報告を計画しているが、各研究者が年2回、月に1度担当し、研究会のサイトにて成果報告をした。 1. 第1回研究会:研究に具体性を持たせるために、本研究の延長線上にある新約聖書注解書執筆に照準を合わせて、この新たな注解書シリーズが読者の地平を強く意識したものとなるために、いかなる執筆指針を共有すべきか、すなわち研究と執筆のフィロソフィーを言語化した。とくに、釈義を展開する際に、どのようなアウトラインに沿うことによって、より読者への説得性が高まるか、また解釈と適用をいかに組み合わせることが読者との対話を深めることにつながるか、という点に注意が注がれた。 2. 第2回研究会:成果物となるべき『新約聖書の解釈学:新たな地平を求めて(仮題)』の執筆準備を兼ねて、各研究者が専門とする批評学の発生から成熟にいたる歴史的・社会的過程をトレースし、それぞれの批評学がいかに新たなテクスト理解へと読者を導くか、その具体例を挙げた。とくに文芸批評、聖典批評、社会史研究、社会科学批評、文化研究批評の5つの批評学エリアからの研究発表を行った。 今年度のこれら2つの作業は、本研究が掲げる2つの問題意識――――すなわち「いかに読者の地平を意識しつつ解釈するか」また「いかに多様な批評学の援用によって新たな視点を提供するか」――――に対して、具体的なステップを踏み出したという点で、非常に意義深い研究第1年目となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2013年度の研究において新約聖書テクストのうち福音書・使徒言行録、そしてパウロ書簡に焦点をあてる予定であったが、分担者全員がより積極的に研究に関与するために、研究範囲を新約聖書テクスト全体と定めて、研究者全員が発表を行い、また討議に参加するという形式に改めた。このことによって、研究会において各主題に関する発表と討議の時間が短くなるという反省点はあるが、全体として均等に研究が進んでいるという点を考慮に入れるならば、研究は概ね順調に進んでいると評価できよう。とくに研究者全員が、成果物として予定している『新約聖書の解釈学:新たな地平を求めて(仮題)』の執筆に向けて具体的なプランを報告できたという点では、目に見える進展があったと考えられる。2013年度の研究活動は、「読者の視点」と「多様な批評学」を意識した2回の研究会を軸にしたことによって、「多彩な背景を持つ読者と様々な文書類型とをより密接に結びつける」解釈姿勢を提示するという当初の研究目的達成を十分に前進させたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、成果物である『新約聖書の解釈学』において、概ねその目的達成が具体的に示される。したがって、この成果物執筆に向けて各研究者がそれぞれの専門分野の視点から研究を進めて、具体的に執筆をすることを促すことが、充実した研究推進となる。達成度報告において述べたとおり、2013年度の研究会においては、当初の計画と異なり、新約聖書テクスト全体を研究範囲と定めた。したがって2014年度の研究会においても、当初の計画とは異なり、新約聖書テクスト全体を研究範囲として、それぞれの批評学を異なる文書形態のテクストに当てはめた解釈の可能性を追求する。具体的には、各研究者が成果物において担当する章の執筆を進め、2回の研究会においてその途中経過を発表して討議しあうこととする。また、研究会のサイトにおける成果報告は、2014年度も継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究方針がより明確化した後で必要な図書を購入することとしたため、2013年度の消耗図書費として充てていたものに未使用額が若干生じたが、2014-15年度で購入すべき図書の購入費として適切に用いられる予定である。 この今年度の未使用額とともに、2014年度に支出が予定される予算は、各研究者の研究に必要な図書費、消耗品費、また研究会のための出張費、そして研究会運営費として用いられる。
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Research Products
(10 results)