2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370392
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
砂山 稔 岩手大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (00091702)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 李商隠 / 道教重玄派 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度と26年度には、主として李商隠と道教に関して研究を行い、論文①「「聖女」・「中元」と「錦瑟」・「碧城」―李商隠と茅山派道教」(『東方宗教』第123号、2014)と論文②「『上清変化七十四方経』と『上清経』―『上清衆経諸真聖秘』と『太平御覧』の引用を軸として-」(『アルテス リベラレス(岩手大学人文社会科学部紀要)』第95号、2015)を執筆した。27年度は、引き続き『大洞真経』や『亀山玄録』などの上清派経典の研究を行う傍ら、段成式の『酉陽雑俎』の「玉格」「壺史」などの集中的に道教関係の記事が記されている部分の研究に歩を進めた。このうち「壺史」には、羅公遠などの道士の事跡が記されているが、折しもこの羅公遠や謝自然などの道士の研究を含む遊佐昇氏の『唐代社会と道教』(東方書店、2015)が公刊されたので、読み進める中に、書評を書くこととなり、『東方』417号(2015.11月号)に「道教の信仰・霊験と俗講・変文―遊佐昇『唐代社会と道教』の行間を読むー」を発表した。以下は重要部分を示す。 遊佐氏は該著で、一見して道教重玄派の思想に近いと見られる俗講の台本である国家図書館所蔵の敦煌文書BD1219を、唐末以後の文献であるかのように看做しており、報告者の道教重玄派に関する学説に批判的である。報告者は書評において、BD1219文書に「雍州」という地名が見えるが、雍州は、玄宗の開元元年(713)には、京兆府に改められていること、更にBD1219文書には、初唐の道教重玄派の成玄英の『老子道徳経開題』(敦煌ペリオ文書2353)に引用される『昇玄経』の特殊な経文と同様の経文が引用されていることなどにより、BD1219文書は初唐末の、道教重玄派に連なる道教勢力の手になる俗講の台本ではないかと指摘しておいた。この指摘は、今後、唐代の道教の俗講と文学との関わりを考える場合でも重要なものであろう。
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