2014 Fiscal Year Research-status Report
1930年代後期中国人日本留学生の演劇・美術活動に関する基礎的研究
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25370394
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小谷 一郎 埼玉大学, 教養学部, 教授 (60136009)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 盧溝橋事変前後 / 中国人日本留学生 / 『留東新聞』 / 『留東学報』 / 引擎出版社 / 留東婦女会 / 『留東婦女』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1930年代後期の中国人日本留学生の演劇・美術活動についてその「掘り起こし」を図ったものである。そこでは第一次資料の発掘、活動それ自体の掘り起こし作業が最も重要になる。本年度は、研究計画に基づきながら廬溝橋事変勃発前後の中国人日本留学生の動きを中心に掘り起こし作業を進めた。1)『留東新聞』について北京大学中文系の協力を得、欠号等を大幅に補うことが出来た。2)『留東新聞』創刊の経緯、留学生初の新聞である『留東新聞』の特徴、37年1月に起きた弾圧事件、『留東新聞』事件に到るまでの概要をまとめ、公にした。3)同事件が、その時留学生が大量に日本国内に取り寄せ、委託販売をしていた『現世界』半月刊と深い関わりがあることを突き止め、同誌の性格を明らかにすると共に、同誌の出版元引擎出版社が中国出版史上初の日本留学生、「南洋華僑」の出資によって作られた出版社であることを明らかにし、同社成立の経緯、同社と留学生の関わりなどを明らかにした。4)同時代雑誌である『留東学報』についてその性格、特徴等、主編の陳固廷、留東学会、『留東週報』について明らかにした。5)新たに『留東学生』、『学連半月刊』等の雑誌を発掘し、留学生の文学・芸術活動の掘り起こしに大きな手掛かりを得た。6)演劇・美術活動と深い関わりのあった、時の女子留学生に関する留東婦女会、彼女たちが出していた『留東新聞』の副刊『婦女的話』、その後身に当たる『留東婦女』等について、現在、中国文芸研究会『会報』に連載中である。7)こうした積み重ねを今後の作業を出来るだけスムーズに運びたい。 本研究はようやくその礎に辿り着いたばかりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一次資料の発掘、収集には北京大学、上海魯迅紀念館、広州美術学院等の研究者の協力を得て、概ね順調に運んでいる。それに基づき整理が着いたところから論文化も果たせた。しかし、今後の資料発掘がどこまで可能かというと必ずしも見通しが立っていないのが現状である。(2)とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き一次資料の発掘、収集、整理に努める。まだまだ断片的でしかないが、ともかく本研究課題の中で一歩前に進める環境は初歩的ながらある程度整ったように思う。美術活動の掘り起こしが甘い。演劇活動についても『国際戯劇』、『劇人月刊』など名前は分かっているのだが所在の不明な同時代誌がまだ残っている。
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Causes of Carryover |
学内事務繁多、他の出版事業、自身の体力的問題もあって複数回の国内外の資料収集作業、長期のそれが果たせなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年5月などに上海、北京等に赴き、資料収集、レクチャーを受ける予定である。
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