2017 Fiscal Year Annual Research Report
ISLE-Margin and Early 1990's Taiwan
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25370399
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三木 直大 広島大学, 総合科学研究科, 名誉教授 (10190612)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 台湾文化 / 1990年代 / 島嶼邊縁 / ナショナルアイデンティティ / 2000年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は雑誌『島嶼邊縁』(1991~1995)に掲載された諸論考を手掛かりに、1990年代前半期の台湾文化再編成の動向を考察しようとするものである。昨年度は総論として「雑誌『島嶼邊縁』と一九九〇年代前半期台湾の文化論」(『アジアから考える』収録、有志社)を発表したが、さらに本雑誌停刊後の主な執筆者間の活動の違いに展開していく思想的な相違を検討するため、平成29年度は助成金の一部を繰り越して研究を継続した。内容は主に以下の2点である。 (1)本雑誌の主なテーマのひとつであるクィア論の考察の一環として、日本台湾学会第19回学術大会分科会「性的マイノリティをめぐる語りの可能性:交差する当事者性を手がかりに」にコメンテーターとして参加し、連携研究者の三須祐介氏、橋本恭子氏らと本課題について検討した。 (2)『島嶼邊縁』の主な執筆者が同時代的に編集や執筆に加わった時期の雑誌『當代』(當代編集委員会、1986~2010、休刊期をはさむ)と雑誌『婦女新知』(婦女新知基金会、1982~)を中心にして論説や記事の調査を台湾の図書館所蔵資料などで継続しておこなったほか、本課題における考察テーマと関連させる形式での論説の発表をおこなった。 上記の作業を通して、雑誌『島嶼邊縁』に象徴される90年代前半期の文化運動の前史となる雑誌『人間』における公共圏と社会批判論との思想史的文脈のあり方、時期を跨いでの『婦女新知』での婦女解放運動とジェンダー論や『當代』での広範な社会思想史的な文脈のなかでの『島嶼邊縁』の位置づけの輪郭と、90年代後半期から2000年代にいたる台湾文化の多様化を詳細に検討していくための手がかりをつかめたと考える。この科研課題によって得られた知見をもとに、継続して台湾文化史の現在にいたる文脈を検討していくこととした。
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