2015 Fiscal Year Research-status Report
カトマンドゥ盆地に保存されるベンガル語・ミティラー語演劇写本
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25370412
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| Research Institution | Osaka University |
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Principal Investigator |
北田 信 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60508513)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | ネワール / ベンガル / 口承文芸 / 演劇・舞踊 / 新期インド・アーリア語 / カトマンドゥ盆地 / 南アジアの伝統音楽 / ビルマ・チベット諸語 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
2015年4月に起こった震災により、カトマンドゥ盆地も大きな被害を被った。その後も社会的な混乱がなかなか収まらなかったため、やむを得ず夏の現地調査先をインドに変更した。9月にインド・西ベンガル州プルリア県で伝統芸能ジュムルを調査・録音録画した。ジュムルは男性達の楽しむ大衆娯楽で、女性ダンサーと男性の楽団からなる。歌詞は、クリシュナ神と恋人ラーダーや牧女たちの愛の伝説に題を取ってはいるものの、農村の日常生活に即した事物が多く読み込まれ、土俗的な艶歌というほうが近い。ジュムルを調査した理由は、ジュムルの歌詞が、中期ベンガル語最初期の作品であるボル・チョンディダシュ作『クリシュナ讃歌』に類似する、としばしば指摘されるからである。『クリシュナ讃歌』は、14世紀頃のベンガルの西部辺境で著され、その作風は、ベンガル・ヴィシュヌ派の宗教歌が洗練される以前の古く土俗的な要素を残し、おそらく今日に伝わるジュムル伝統の原型であろうと推定される。この書物の写本断片が何故カトマンドゥで発見されたのか、その理由を解明することは今後の重要な課題であり、またマッラ王朝初期に戯曲がベンガル語を用いて著されていたことと無関係ではないだろう。
このほかに、西暦1561年にパタン王国のヴィシュヌシンハ王がベンガル語で著した演劇写本『パーリジャータの誘拐』を解読した。王の家族の人名が言及されており歴史的資料としての価値も高いことが判明した。
12月に国際ベンガル学会において『クリシュナ讃歌』写本断片発見についての発表を行った。3月にはフランス国立東洋言語文化研究所において、カトマンドゥの演劇伝承と演劇写本について講演し、ベンガル文学・ネワール演劇の研究者達と意見交換を行った。その結果、本研究が最先端の民族文化・芸術研究に十分に触れ得ることを認識した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年4月のネパール震災および、その後の社会的混乱が長らく収束しなかったため、カトマンドゥでの現地調査を取りやめ、もっぱら写本の解読を行った。インド・西ベンガル州での伝統芸能の調査により、今までとは違った視点からカトマンドゥの演劇写本を考察・位置づける重要なヒントを得ることができた。また、ネパールの民族学的研究（特に民族芸能・演劇学）の先端をゆくフランスで専門家と意見交流をし、レヴィストロースを初めとするフランス流の民族学・文化人類学・表象文化論に本研究を繋げて行く可能性や、本研究の成果を国際的に発表していくことの意義を大いに認識することができた。したがって、震災による遅れはあるものの、その代替策による予想以上の研究の進展があったため、合わせて評価し（２）とする。
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| Strategy for Future Research Activity |
夏にカトマンドゥ盆地を訪れ、ネワール古典文学・写本学の専門家と演劇写本の解読作業を続行する。また、カトマンドゥ盆地南端に位置するファルピン村の伝統演劇伝承者を訪ね聞き取り調査を行う。
今まで行ってきた写本の文献学的研究および現地調査を総合して、カトマンドゥ盆地に保存される演劇写本と、現地の演劇伝統について、美学的な観点をも加えて考察していく。
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| Causes of Carryover |
2016年2・3月に行ったフランス出張のため、先年度、前倒し請求を行っていたが、経費を予定よりも少なく抑えることができたため。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
カトマンドゥ盆地における現地調査および資料収集に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
